天使のあくび 5
「はいはぁ〜い!どいたっどいた!オリヴィエ様の通りだよぉ〜ん♪」
けたたましいヒールの音と共にクラヴィスの館にオリヴィエが現れた。クラヴィスとジュ
リアスはまだ朝食の最中だったがオリヴィエは構わずズカズカと歩みを進める・・・
「あらごめんねぇ〜、お食事中だった?ん〜、ジュリアスったら今日も可愛いねぇ〜。
お早うのご挨拶して★」
そう言うとオリヴィエはジュリアスの傍らに近寄り右頬をジュリアスに寄せた
「・・・・?」
「いやねぇ〜、ジュリアス。チュッてして★」
何をすればいいのかようやく分かったジュリアスはオリヴィエの頬にチュッとキスをす
るそしてオリヴィエは「お返しね♪」と言うとジュリアスの頬にキスを返した。その様子
を苦々しい面持ちで見ていたクラヴィスは「一体、何をしに来たのだ」と言葉を投げかけ
た。
「やだよぉ、クラヴィス。私はジュリアスの洋服を持ってきたのサ!たぁ〜んまりと
ね。今、全部ジュリアスの部屋に運んでもらっているからさ・・・ご飯食べたら着替え
よぉ〜ね♪ジュリアスv」
かいぐりかいぐり、とジュリアスの頭を撫でるとニッコリと微笑んだ。朝の和やかな雰
囲気が一転、オリヴィエが来たことによって騒がしい朝になってしまったことにクラヴィ
スは「これから先が思いやられる・・・」と頭を悩ましていた・・・・。
朝食を食べ終わるとオリヴィエはジュリアスを抱き上げ「ジュリアスの用意は私がしてア
ゲルからアンタも早く着替えちゃいなよ!」と言う言葉を残してジュリアスの部屋へと消え
て行った。
クラヴィスは側仕えの者が身支度の手伝いをするのをみながら考えていた・・・。
(そう言えばこの様に目覚めの良い朝は随分と久し振りのような気がする・・・。朝日と共に
目が覚め時間通りに出仕する。何ともあのジュリアスの様な生活だ・・・)
とジュリアスがいない今は自分が執務をジュリアスの分までこなさなければならないの
だろうと内心気が沈みながらもこれも致し方のないことか・・・と自分を言い聞かせいていた。
・・・・コンコンッ。
「ジャーン!ジュリアスのお着替え終わったよん★見て見てクラヴィスッ」
ノックの返事も待たずにオリヴィエはクラヴィスの部屋に乱入してきた。背後にはジュ
リアスを隠しているのだろう大きめのストールを大きく広げながらクラヴィスの前へと来た。
「見てよ〜、オリヴィエ様の渾身の一作ぅぅ〜」
ストールをバサッと勢い良く払うとそこには昔幼少の頃に聞かされたお伽噺の主人公が
いた。クラヴィスの側仕えの者も歓声を上げた・・・
「題して【不思議の国のジュリアス】なぁ〜んちゃって」
オリヴィエの言葉通りそこに現れたのは【不思議の国のアリス】と言う物語に出てくる
主人公の格好そのものだった。空色のワンピース、純白のエプロン、金糸に良く映える黒
いリボン、白いハイソックスに黒いストラップのついた靴・・・。何もかもがアリスそのもの
だったのだが1つだけ違った物があった・・・・。
「オリヴィエ・・・これは一体何なのだ?」
クラヴィスはジュリアスの背中に付いている物を不思議そうに触った。
「あぁ、それ?それは【迷子防止メカ】」
オリヴィエの言葉にもう一度ジュリアスの背中に視線を戻す。ジュリアスの背中には羽
根が着いていた。そう絵本などでよく見る天使の羽根のような物が着いていたのだ・・・。そ
れはリアルな物ではなくよくよく見れば布製でリュックサックになっていた。
「これが迷子防止なのか・・・・」
釈然としないクラヴィスはまた聞き返した。
「そうだよ。私が外の羽根のリュックサックを作ったんだけどコレ中に発信器が入ってい
るんだ・・・今ね、迷子防止でさぁ〜ちっさい子に普通のリュックに紐付いてるのが売って
てね親がその紐持って歩いたりしているんだよ。でもさぁ、それってなんだか犬の散歩
みたいで私イヤなの!だから、ゼフェルに頼んで小型発信器を作って貰ったのさ!かー
いいデショ?」
確かに愛らしいとクラヴィスは思っていた。まるで本当の天使が舞い降りたかのように
そこだけが輝いていた。だが・・・・
「ジュリアスはその格好を嫌がらなかったのか?」
素直な疑問をぶつけてみる。普段のジュリアスなら嫌がって着ないはずだ・・・幼少の時に
でさえ前夢の守護聖が色々と作ってきた物を着なかったジュリアスがオリヴィエの作って来
た服を素直に着るとは到底思えなかった・・・・。
「べっつにぃ〜?全然嫌がらなかったよ★」
「そうか?」
どんな格好をさせられているか自分でも分かっていないのかも知れぬな・・・。
「そんな、事より早く行こうよ★遅れちゃうよ〜」
オリヴィエは自分の作った力作を早く皆に見せたいらしく「早く、早く!」と責め立て
る「コレではどちらが子供か分からないな・・・」と苦笑しながらもクラヴィスが部屋を後
にしようとした時、ジュリアスが両手を伸ばして「抱っこ・・・」とねだっていた。クラヴィ
スは「仕方がないな・・・」と微笑みながらジュリアスを抱き上げた。
「クラヴィスさま・・・あのね・・・」
「なんだ?」
・・・・・ちゅっ!
「あさのごあいさつ・・・クラヴィスさまとしてなかったから・・・・」
「そうか・・・」
オリヴィエの教えてしまった変な挨拶はどうやらジュリアスに根付いてしまったらしい・・
クラヴィスはジュリアスのキスを受けた頬をさすりながら「別にそれも悪くはない・・・」と
感じている自分を不思議に思いながらも「ちょっと〜早く!」と遠くの方で自分を呼んでい
るオリヴィエの方へと足を進めた・・・・
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