天使のあくび 4
          食事が出来たとの知らせを受けてこの様に気持ちよさそうに寝ているのを起こすのは          可哀想だと思ったが、一応約束をしたので起こしてやる・・・           「・・・・ジュリアス・・・・ジュリアス、起きよ。食事が出来たぞ・・・」           軽く揺さ振りながら、【何時もとは逆だな・・・】と次第に口元に笑みが上る。ジュリア          スを起こすなど滅多にないからな・・・。           「ジュリアス、起きよ・・・・」                      何度目かの呼びかけでようやくジュリアスが身を捩り瞳をこすこすと擦りながら起き          た・・・・。           「んぅ〜・・・・」           「そらジュリアス、食事が出来たのだ。食べに行くぞ・・・」           「うん・・・」           まだ眠そうに返事をするジュリアスを抱き上げると部屋を移動した。           「わぁ〜きれー」            ジュリアスは用意された食事をまるで宝石でも見るように瞳をキラキラと輝かせな           がらはしゃいでいた。テーブルの上には色鮮やかなゼリーやケーキ・・・もちろんジュ           リアスが先程言ったプリンもちゃんと用意されていた。デザートだけではなく、食事           は先程フォルヴィアが言った物と後は料理長が考えて用意した物が所狭しと並べられ           ていた・・・・。           「さぁ、ジュリアス様。お好きな物をお召し上がり下さい」           「はい」            元気良く、何処か照れくさそうにジュリアスは返事をするとちょこんと大きな椅子           に座ったそして『いただきます』と言うと小さな口で目の前の料理を美味しそうに“は           ぐはぐ”と食べた。その姿はおおよそあの光の守護聖ジュリアスからは想像出来ない           ほどの食べ方だった・・・ぽろぽろと食べ物を零し、ぽとぽとと食べ物を落とす・・・。こ           れは行儀作法として怒らねばならぬ事なのだが怒る気になれないのは多分、このジュ           リアスの姿が愛らしい子供の姿と言うことだけではないだろう・・・。胸の奥が暖かく           なるのを感じる・・・・。            「美味しいか、ジュリアス・・・」                    片手にワイングラスを薫らせながらクラヴィスは言う。                      「うん、とってもおいしい!」            紫色の瞳を細めならが『そうか・・・』と一言クラヴィスは言った。何時もは閑散とし           ているクラヴィスの館の夕食も今日は和気としている。クラヴィスもまた日頃とは違           う食事の味に気が付いていた。1人では何を食べても感動などしなかったこの館の料           理が今日は格別に美味に感じていた。            食事も終わり用意されたジュリアスの部屋に通してやる。            「ひろい、おへや・・・・」            自分のいる光の館の方がもっと広いだろうに子供のジュリアスは瞳をまぁるく開く。            「ここを好きなだけ使うがいい・・・・」            「クラヴィスさまは?いっしょじゃないの?」            「あぁ、私は別の部屋にいるから用があれば呼びに来るがいい・・・。この部屋はイヤ             か?ジュリアス・・・」            「ううん、ちがうの・・・・」            「そうか?」            何が一体ジュリアスは気に入らないのかクラヴィスには全然分からなかった。その           時部屋のドアがノックされ入って来たのは執事のフォルヴィアだった。            「クラヴィス様、ジュリアス様の夜着を持って参りました。明日の服は用意は無用             と先程、夢の守護聖・オリヴィエ様から連絡が入りましたので・・・。ご用意はこ             れだけに・・・・」            「あぁ、充分だ・・・」            「バスの方の湯はもう張っておりますので、お願いいたします・・・・」                   それだけを言うとパタリとフォルヴィアは出ていってしまった。            「お願いいたします」とは一体どういう事だ・・・。はっ!まさか、私がジュリアスを            風呂に入れろと言うことか!・・・・・・・・・・ふぅ、まぁ仕方がないな。            クラヴィスは1つ溜息をする。            「ジュリアス、風呂に入るぞ・・・」            「おふろ?」            「あぁ・・・そうだ。」            ジュリアスを抱き上げて浴室に向かいジュリアスの服を脱がせてやる。始めは自分           で脱ぐだろうと思ってさせてみたのだが・・・・どうも、この手の服は子供には難しいら           しく次第には涙目になるので仕方なく脱がせてやる。            布が次第に剥がれていく度に白い柔らかな肌が露わになる、陽の光になど浴びてい           ないはずなのに輝いている。            「クラヴィスさま・・・?」            「・・・・・・。」            「クラヴィスさま、さむいよ・・・・」            裸になったことで肌寒くなったジュリアスが身動ぐ。その動きで私はふと我に返っ           た。・・・私は何をしていたのだろう。            「あっあぁ、すまなかったな。」                        自分の長衣の袖や裾を捲ってジュリアスの頭に湯を被せる。堅く目を瞑り息を止め           ていたジュリアスは湯が流れ終わると「ぷぅーっ」と息を付いた。                       「苦しかったか?」            「ちょっとだけ・・・」            にこやかに微笑みながら言う。            「頭を洗うから眼を閉じていろ、シャンプーが眼に入るからな」            「うん」                         堅く目を閉じるジュリアスを確認してから柔らかな金色の髪の中に手を差し込む。           水を充分にうけてもなおジュリアスの金糸はとてもしなやかで柔らかだった。良く泡           立てて髪を洗うと髪から白い泡が落ちジュリアスの肩に落ちそして胸に流れた・・・。            「くすくすっ・・・」            「どうした?何か可笑しいのか?」            「あわがくすぐったい」            「そうか?」            髪から落ちる泡がくすぐったいとジュリアスは言う。普段自分で洗っていてもそう           は思わないが・・・・子供と大人の体では違うのだろうか・・・。随分昔の事でわすれてし           まったが・・・・。            クラヴィスはジュリアスの言う事をあまり気にせず入浴をすませてやった。湯上が           りのジュリアスは桃色に肌を染めてベッドの上に登ろうとする・・・            「ジュリアス、待て。髪を乾かさねばベッドが濡れてしまうぞ・・・」            慌てて呼び止めたが、目先の柔らかなベッドには勝てなかったらしい・・・。ジュリア           スは嬉しそうによじ登り跳ねようとしたところをクラヴィスが止めた。                  「ほら、ジュリアス。髪を乾かしてからにしろ・・・・」            ベッドの縁に座らせて髪をドライヤーで乾かしてやると濡れて窄まっていた金糸が           ふわふわと軽やかに踊り出した。            「全く、お前の髪は鮮やかで軽やかだな・・・。私の髪とは正反対だ。」            「あざやか?かろやか?」                        頭を上げて不思議そうにクラヴィスを見上げる。            「あぁ・・・お前の髪は金色で・・・・軽やか・・・軽やかが分からぬのか・・・・ふわふわして             いると言ったのだ」            「僕の髪はふわふわしてるの?」            「あぁ、見て見ろ私の髪とは違うだろう・・・・」                      クライヴィスは自分の髪を一房取るとジュリアスに触らせた。            「ほんとだ!クラヴィスさまのかみまっくろ・・・・でも、すべすべしてとってもきもち             いい!ぼく、だいすき!」            「そうか・・・」            何を赤くなっているのだ私は・・・・。湯にでもあたったか?            「ジュリアス、もう寝るのだ・・・。明日も色々あるだろうからな・・。」            「えー」                        不満そうに頬を膨らまして抗議をしている。            「寝るまで側にいてやるから・・・・」            ジュリアスを寝かせシーツを掛けてやり、ぽんぽんと軽く胸のあたりを優しく叩いて           やると気持ちよさそうに瞳を閉じた。            「・・・・さすが、子供だな」            髪を撫でてやると数分もしないうちにすーすーと寝息が聞こえて来た。この様な子供           があんなに大勢の大人や子共たちに世話を焼かれ、質問責めにあっていたのだ。疲れる           のも無理はない・・・・。            クライヴィスはジュリアスが寝ているのをもう一度確認して部屋を後にした・・・・。           自室に戻りグラスに寝酒を注ぎ月を見ながらそれを飲む。クラヴィスはこんなに心穏           やかな日は本当に久し振りだと感じていた。飲み終えたグラスをベッドのサイドテー           ブルに置くといつもなら考えられないほどの早い時間に床につく。『こんな日がたま           にはあっても良いだろう・・・』とクラヴィスは考えながら瞳を閉じた・・・。               
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