天使のあくび 2
            クラヴィスの館では主の帰宅に右往左往の大騒ぎだった。それもそうだろう、ク            ラヴィスが金髪の子供を抱きかかえながら帰ってきたのだから・・・。聞いてみれば                       「これは、ジュリアスだ。」             の一言しか言わない。その言葉に皆暫し考える。【ジュリアス・・・と言うことは、            あの光の守護聖のジュリアス様と同じ名前の子供か。だがしかし、ジュリアス様に            良く似ていらっしゃる・・・ジュリアス様が幼少の頃は・・・・】とクラヴィスの館の使            用人たちがそれぞれ思っていた時、その考えを見透かしたように主の言葉が使用人            たちを氷のように固まらせた。            「お前たちが思っているのは恐らくジュリアスと同じ名前の子供とか思っているか             も知れないがそれは違うぞ・・・。この子供はジュリアス自身だ。今朝起きたらこ             うなっていたらしい原因は分からず仕舞いだ。取り敢えず元に戻るまで家で面倒             を見ることになったからな・・・。以上だ。」             クラヴィスはここまで一気に言うと抱きかかえているジュリアスを優しく床に下            ろしてやった・・・。大勢の使用人たちに驚いているのかジュリアスは床に足が着くな            りクラヴィスの後ろに隠れてしまった。            「ほら、ジュリアス。これからお前の面倒を見てくれる者達だ何か一言、言っておけ」             ジュリアスの背を押して皆の前に出してやるとジュリアスは助けを求めるように            クラヴィスを見上げたがクラヴィスは優しい瞳を送ってやるとニッコリ微笑んで使            用人たちにペコリと頭を下げて            「おねがいします」             と言った。            (一言とは言ったがこの様な事を言うとは思わなかったな・・・。こんな小さな子供だ             から頭を下げるか自分の名前を言うかが精一杯だと思ったが・・・。この様な言葉、             何処で覚えたのやら・・・)             クラヴィスはジュリアスの立派な言葉に驚きながらも小さな頭を下げる姿を微笑            ましく見つめていた。            「クラヴィス様、本日の夕食はいかが致しましょう・・・。そのジュリアス様のお食事             が・・・・何が宜しいのでしょうか・・・」             クラヴィスの館の執事フォルヴィアはこれほどまでに幼い客人に何を出して良            いものか悩んでいた。            「本人に聞けば良かろう・・・・」             素っ気なくクラヴィスが言うので、フォルヴィアは身を屈めてジュリアスに聞く。            フォルヴィアの行動に驚いたのかジュリアスは紺碧の瞳を大きく開いてクラヴィス            の長衣をぎゅっと握った。            「ジュリアス様、食べ物でお好きなものはございますか?」            「・・・・・・・プリン」             その言葉を聞いてガクーッと肩を落とすフォルヴィアを見ながら集まった使用人            とクラヴィスは笑いを堪えてその光景を見守った。            「いえ、そうではなくて・・・。ハンバーグとかオムライスとかスパゲティとか」             フォルヴィアは小さな子供が好きそうなものを一通り言ってみた。            「ん〜・・・なんでもいい・・・」            「はぁ、そうですか・・・・」            「クッ・・・何がよいのかまだ分からぬのだろう。今言ったものを一通り用意してやれ             ばよい。」                   クラヴィスはジュリアスの手を引いて私室へと歩いた。執事に            「夕食の用意が出来たら呼べ・・・」             と言う言葉を残して。ジュリアスはクラヴィスに手を引かれながらあいている方            の手で大きく手を振っていた。その場に居た女性の使用人は小さくジュリアスに手            を振り男性の使用人と執事は深く頭を下げた。だが皆笑いを噛み締めていた。それ            は颯爽と歩く我が主の姿と隣に居るとてとてと歩く小さな天使の余りのミスマッチ            さに・・・。可愛らしいと笑みを堪えていた。
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