天使のあくび 17
 「えーと、えーと、あぷろしぇの“み”。アプロシェの“み”。」            ジュリアスは名前を忘れぬよう必死に何度も繰り返す・・・。森はザワザワと騒ぎ出し           足下をサワサワと風が流れていく・・・。昼なのにうっすらと辺りは暗く、ジュリアスは           泣き出したくなるような恐怖を勇気の出る言葉「アプロシェの実」を呟きながら森の           中にある大きな木を目指し小さな足でひたすら歩いていた。              『この実があればどんな人でも元気になれる・・・・』            その言葉を信じて森の中央にある大きな木を目指して歩いた。オリヴィエがジュリ           アスに似合うようにと選んだ服や靴は木の枝や小石に引っかけ破れていた。空を見上           げても木々に覆われて空は見えなくジュリアスの小さな心は悲鳴を上げそうだった。            「うっ・・・ぐすっ・・・こわいよ・・・・くらう゛ぃすさま」            勢い良く進んでいた歩みも次第に立ち止まろうとしていた時、ジュリアスの背後で           ガサッと物音がした。            「ひっ!」            ビクッと身を縮こませるとその恐怖から逃げるために走り出した。            「こわくない!こわくない!こわくなんかないもんっ!」            はぁはぁと息を弾ませどれくらい走っただろう・・・・。辺りは先程よりも薄暗くなり           ジュリアスの目の前には誰をも萎縮させてしまうような大樹がそびえ立っていた・・・。            「・・・・・はぁ、はぁ・・・・これがおじいさんのいってたき・・・・ついた・・・やっとついたよ」            喜びと走ってきた事でジュリアスの小さな心臓は大きく弾んでいた・・・。            「こ、これでクラヴィスさまがげんきになれる」            ジュリアスは大きく深呼吸をすると自分の何倍もあるような岩岩によじ登り始めた。           筋力も付いていない身体に自分の身体を支えるというのはどれ程大変なことだろう次           第に薄い指先の皮が破れ血が流れ出す・・・。期待に胸を弾ませていた顔も今は指先の痛           みに歪んでいた・・・。            ・・・・人を想う気持ちと言うのは得てして自分持つべき能力も超してしまうことがあ           ると言う。想いは身体を動かし心を動かすそして・・・想いは思いを変える・・・。今のジ           ュリアスもまた想いが身体を動かしてた・・・            ・・・・・それでも、小さな想いは・・・・壊された。            必死に掴んだ岩の表面がポロッと剥がれジュリアスの身体が中に浮いた。            「ヒッ!」            まるで風に飛ぶ紙のようにジュリアスの身体はヒラヒラと舞って地面に落ちた。           「うっ」と言う息が詰まる声と共にジュリアスは意識を失った・・・・。            ・・・・・・・・・ジュリアスが            ・・・・・・・・ここにいることは            誰も知らない。
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