天使のあくび 16
             クラヴィスの館を抜け出したジュリアスは1人てくてくと歩いていた。今のこ             の姿があの光の守護聖・ジュリアスだ。と知っている者は一部の者だ・・・聖地に             住む民の者は誰1人として知らない・・・。              だが、どうしても人の目についてしまう可愛らしさがジュリアスを噴水の見え             る公園のベンチに座らせていた。その隣に居るのは人生の年輪を重ねた老人だっ             た。              「お嬢ちゃん、どうしたんだい?そんなに悲しそうなお顔をして・・ほら、ほっ               ぺが落ちてしまうほど美味しい飴をやろうここに座るといい・・・」              その老人は優しい瞳を細めてベンチをポンポンと叩いた。ジュリアスはコクン             と頷くと老人の傍らに座り口いっぱいに広がる大きなまぁるい飴を貰い頬張った。              「お嬢ちゃん、お名前は?」              「ぼくのなまえは、ジュリアス」              「“ぼく”?女の子じゃなくて男の子だったかそれはすまんかったなぁ。それ               でジュリアス?そんなに悲しそうな顔をしてどうしたんじゃ」              きゅっと唇を一度結ぶとジュリアスは老人に話し始めた。              「あのね、クラヴィスさまがね。ぼくのせいでおしごとしすぎちゃうの・・・。だ               から、きょうもあそべないの・・・・」              ジュリアスは精一杯拙い言葉ながらも老人に話した。              「みんながつかれてるんだから“やすませてあげなさいって”だからね、ボク               ひとりなの・・・」              「そうか・・・だからさっきあんなに泣きそうな顔をしていたんだな・・・」                「ちがうのっ!」              大きな声をだしてジュリアスは老人の言葉を遮った。意志の強そうな大きくク             リクリと可愛らしい瞳が老人の顔を真摯に見つめる・・・              「ちがうの・・・おじいさん。ぼくね、ひとりぼっちもさびしいの・・・でもね・・・               でもね、クラヴィスさまに・・・げっ、げんきになってほしいのォ・・・ひっく」              遂にジュリアスはポトポトと泣き出した。今にも大きな瞳がこぼれ落ちてしま             うのではないかというくらいに涙を次々に流して・・・ひっくひっくと小さくしゃ             っくりを繰り返して肩を振るわせて・・・。                            「こりゃ困ったな・・・」              老人はどうしてあやして良いものか分からずに困ったように眉を寄せた。こん             な小さな子供がこんなにも純粋に大人を思うとは・・・なんと心の優しい良い子な             のだろう・・・      「そうだな・・・アプロシェの実でもあればなぁ・・・」              「ア・・・プロシェのみ?」              「その実を食べると元気になれる薬なんじゃ・・・。緑の葉っぱに空色の実がなっ               ていてその実を食べると、どんなに元気のない人間でもたちまち元気               になれる実なんだが・・・」              先程まで泣いていたジュリアスは、クラヴィスを元気にさせる方法が見つかっ             たとばかりに老人の話を一生懸命耳を傾けて聞いている・・・。              「どこあるの?その“み”」              「ほら、あそこの森の奥にあるんだよ・・・」              青々と茂る森を指差した。その森の木々は先程から吹き始めた風でザワザワと             揺れていた。              「あそこの森にそれは大きな木があってその後ろに大きな岩々があってその隙               間にあるんだ・・・。まぁその岩と言うのが人間の身長よりも遙かに大きい物で               取るのはとっても難しい物とされているんだ。だからアプロシェの実は貴重               な物とされているんだよ・・・・だが、今の季節じゃないけれど・・・・」              老人が指を下ろし隣のジュリアスを見ようとした時にはもうそこにはジュリア             スの姿はなかった・・・。              「おっ・・・おや。どこにいったんだ?ジュリアス・・・・」              老人の声は噴水の水音に物寂しく消えていった・・・・。
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