天使のあくび 13
             「なんで、リュミエールは良くて俺はいけないんだっ。オリヴィエ!」                           自分だけのけ者にされたオスカーは息も荒くオリヴィエに詰め寄る。              「リュミちゃんのあれは父性愛だもの。オスカーあんたのは汚い欲情、あぶな               ぁーい、ショタコンのロリコン!だからダメー☆危ないったらありゃしない」             オスカーは自分がまるでバイ菌扱いされショックのあまりテーブルに倒れ込む。              「このオスカー様が・・・・ショタでロリ・・・・そんな馬鹿な」             自分のことは案外他人に言われてみないと分からないと言うことが人生多い。              「さぁさ、オスカーの事なんてほおって置いてジュリちゃん遊ぼうねェ〜v」             倒れている人間はさて置きと・・・。皆がジュリアスに構い始める。              「あ〜、ジュリアス。良い物見ますか?」              「いいもの?」              「え〜そうですよ」              「みるー」             ルヴァの良い物が何かを知っている皆は“また始まった”と苦笑いを浮かべたが            オリヴィエだけは嬉しそうである。ルヴァは奥の部屋から数個大きめの箱を持って            来て毛足の長い絨毯の上に置いた。ルヴァを中心にして扇形のように座る。              「みんな、原石ですが綺麗でしょう?ジュリアス、これが宝石になるのですよ」              「ほうせき?」              「えぇ、ほらオリヴィエが指に付けているキラキラした石があるでしょう。こ               の原石を磨くとああいう宝石になるのですよ」              「ふーん、ねぇルヴァさま。このきいろいいしはなあに?なかになんかいるよ」             ジュリアスは箱の中にある数々の石の中から琥珀色の石を指差した。中に何かがい            るのが先程から気になっているらしい・・・。              「あぁ、これは“琥珀”と言って大昔の木の樹脂から出来た宝石なのですよ」              「じゅし?ハチミツみたい・・・」              「あ〜その様な物です。樹脂が流れる落ちる時にこの虫を取り込んでしまったの               です。それが固まって年月が経ったものなのですよ」              「ルヴァさま、じゃあもうこのムシさんはでれないの?」              「えぇ・・・・もう出れないのですよ。」                           何処か寂しそうにルヴァは答えた。              「とじこめられちゃってかわいそう。まわりはきいろでキレイなのに・・・ムシさ               んでられないんだって・・・・」             そのジュリアスの言葉に皆、胸を突かれた気がした。「閉じこめられちゃって可            哀想。回りは綺麗で美しいのに・・・」とそれは紛う事なき聖地のこと。任期を終えて            出たとしても別の時間が流れている。この虫も同じ、例え何かの化学の発展で生き            てこの琥珀の中を出られたとしても外は別の時代。別の時間。                                       「ムシさん、ぼくじゃだしてあげれないんだ・・・ごめんね。」             そう涙まで浮かべて琥珀をさすっているジュリアスがこの言葉を言うと涙が出そ            うになる。              「ジュリアス・・・・。貴方は優しい人ですね。」                           ルヴァは涙を浮かべるジュリアスの背を優しくさすってあげた。ルヴァ自身の瞳            にも涙が浮かぶ・・・“何も・・・何もジュリアスにしてあげられない”とするとジュリ            アスが心配そうにルヴァを見上げた。              「ルヴァさま、どこかイタイの?」              「えっ・・・・」              「ルヴァさま、ないてる」              座っているルヴァの頭を一生懸命に背伸びをして撫でる。              「いたいのいたいのとんでいけー!」                            ジュリアスはルヴァを撫でていた手を両手いっぱいに広げて窓の方に向けた。              「こうするとね、イタイのとんでいっちゃうんだって。ルヴァさまイタイのとん               でった?」              「えぇ、飛んでいきましたよ。ジュリアス」              ルヴァはジュリアスの両手を握りしめた。              「あのね。ルヴァさまがイタイとね、ぼくもイタイから・・・ルヴァさまがイタイ               時はとんでいけー!ってやってあげるね。」              ニコッと笑うとジュリアスはルヴァの耳元にコソコソと皆に聞こえないくらい             の小さな声で「だから、ぼくがイタイときもルヴァさまがとんでいけー!ってや             ってね」と囁いた。              「なによぉ〜、コソコソ話しちゃって!ジュリアス何はなしてるのv」              「オリヴィエさまにはナイショー!」              「え〜、教えてよ。ジュリアス」              「だめー。ねールヴァさま」                      人懐っこくジュリアスはルヴァの腕にしがみついた。                「そうですねージュリアス。」              「えへへ。」              ジュリアスはルヴァの答えに満足したように微笑んだ。多分2人だけの【秘密】             と言うのを持ったのが嬉しかったのだろう・・・オリヴィエもそれが分かるからこそ             ゆっくりと微笑みそれ以上は聞かなかった。              それからジュリアスを囲み皆が楽しく時間を過ごした。走り回り、話を聞かせ             たり、音楽を楽しむ・・・・。だがその時はもうすぐ終わろうとしていた。部屋の扉             がノックされたのだ。現れたのはクラヴィス・・・・クラヴィスの姿を見ると他の者             の手をすり抜けて走っていく・・・             「クラヴィスさまーっっ!」              “ととと”と両手を広げ走っていくジュリアスをクラヴィスは抱き上げた。             「すまないな、思ったよりも時間が掛かってしまった。」                            きゅーっとクラヴィスにしがみつく。普通に皆と過ごしていたがきっとクラヴィ             スがいなくて寂しかったのだろう・・・             「皆も迷惑をかけたな・・・」              子供を抱く父親のように穏やかな顔をする。             「いいえ〜。そんなことはないですよ私たちもジュリアスと遊べて楽しかったです              し・・・・」             「そうねぇ〜、こっちがまた頼みたいくらいよv」             「クラヴィス様、またジュリアス様と遊ばせて下さい。」             「私からもお願いいたします」             「あっ、俺もお願いします」              クラヴィスは暫し考えた挙げ句             「あぁ、オスカーを除きいいだろう。オスカーお前はジュリアスに会う時は最低3              人以上の人間をつけろそれなら許そう・・・」             「そっそんな!幾ら何でもこんなに小さなジュリアス様に何もしませんよ!」             「信用できぬ」              後ろでは4人が笑いを必死に堪えていた。             「観念したらぁ〜、オスカー。条件を呑まなきゃジュリアスと遊べないよ」              どうも引く気配のないクラヴィスにオリヴィエが助け船とも言える言葉を投げか             ける。オスカーはたっぷりと暫し考え込むと“はぁー”と盛大に溜息を付いて渋々             クラヴィスの条件を呑むことにした。             「分かりました。ジュリアス様に会う時はそうします・・・・」             「分かればいいのだ・・・。」              満足げに頷くクラヴィスは“もうそろそろ帰るとする”と言うと礼を言って抱             き上げているジュリアスと共にルヴァの邸を後にした。帰り際にジュリアスが皆             の方を向いて“バイバイ”と小さな手を振って行った・・・・。パタンと扉が閉まると             ぐずぐずとマルセルが泣き出した。             「あらら〜マルセルちゃん。どうしたのよ〜」             「だっ、だって・・・あんなに楽しく遊んでいたのにクラヴィス様が来たら僕の手な              んかすり抜けてジュリアス様行っちゃうから寂しくなって・・・」             「マルセルの気持ち、良く分かります。私もクラヴィス様が羨ましいです・・・」              どうやらマルセルとリュミエールの言葉に皆同意のようだ。あれ程、長い時間             を過ごし楽しく遊んでいたとしても結局はクラヴィスには勝てない。手を繋いで             いても手を振り払ってクラヴィスのところへ行ってしまう・・・。振り払われたその             手にはまだ温もりが残っていて・・・。            「しょうがないよ!クラヴィスはジュリアスのパパみたいなもんだし・・・」            「そうですね〜」             寂しい思いはするが所詮親には叶わぬのだと皆心に言い聞かせてそれぞれの館に            帰っていった。                 
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