天使のあくび 12
マルセルと部屋中を走り回っていたジュリアスは走ることに疲れたのか今はルヴァ
達がいるテーブルに座り、りんごジュースを飲んでいた。しかし、興味のある物を見
付けてそちらの方に近寄っていく・・・・
「リュミエールさま、これなぁに?」
ジュリアスはリュミエールの傍らに置かれたハープを指差して不思議そうに聞く。
「これはハープと言って、弦を指で弾いて音を出す楽器なのですよ」
「ゆびではじく?」
はてな?とジュリアスは首を傾げた。リュミエールはクスッと笑うとジュリアス
の手を取り弦の上にのせ指で弦を弾かせてやる。ジュリアスの小さな指が奏でた音
はポロンととても可愛らしい音だった。
「わぁ〜、きれいなおと!」
ジュリアスはキラキラと瞳を輝かせてリュミエールを見上げた。
「でしょう?ハープは気持ちを安らげる音なのですよ・・・」
「そうなんだー。リュミエールさま、ひけるの?」
「はい、弾けますよ。」
にっこり微笑んでリュミエールが言うと“すごーい、すごーい”とジュリアスは
ジャンプした。純粋に物事を喜べる姿というのはなんと素敵なことなのだろうとリ
ュミエールは心の中で思っていた。こう毎日同じように過ごしていると感覚が感性
が鈍っていくように感じていた。だからこそ、道ばたで小さく咲いた花や季節が少
し変わり高くなった空のことを気付かずに歩いてしまうことがある。そんな自分に
悲しささえ感じていた・・・。だが、このジュリアスの姿はどうだろう・・・。
たった1つ爪弾いただけなのにこの純粋に輝く瞳は・・・なんて美しいのだろう・・・
忙しすぎる毎日に退屈すぎる毎日に人知れず小さな喜びを感じていなかったのだと
気付く・・・。
「リュミエールさま?どうしたの?」
心配そうにジュリアスがリュミエールの顔を覗き込む。
「いいえ、何でもありません。ジュリアス様・・・・」
ハープをまた傍らに置くとリュミエールは少し無礼かと思ったがジュリアスを抱き
上げた・・・・
「ありがとうございます。ジュリアス様・・・」
「・・・・?」
ジュリアスは何を言われたのか分からないと言う風に小首を傾げたがリュミエール
の言葉を幾分気にした風でもなく抱き上げられたのが嬉しかったのかニコニコと笑い
始めた。リュミエールは腕の中にいる小さな愛おしい者を腕に余り力の入らないよう
に抱きしめた。
「りゅみえーるさま、いいにおいがする」
「そうですか?」
「うん、クラヴィスさまとはちがったにおい・・・クラヴィスさまのにおいもすきだけ
どリュミエールさまのにおいもすき!」
そう言うとジュリアスは小さな腕を伸ばして必死にリュミエールにしがみついてく
る・・・“この涙が出そうな位の愛おしさは何なのだろう・・・。”リュミエールは何時ま
でもジュリアスを抱きしめ続けた・・・。
「あらら〜、リュミちゃんもジュリアスのこと好きになっちゃったみたいね☆」
「えっ、えぇ・・・」
皆が見ている前でジュリアスを抱きしめていることに恥ずかしさを感じながらも
リュミエールは頷いた。身体を離そうとするとジュリアスの手がまだリュミエール
の服を掴んでるそれを見たオリヴィエは苦笑すると“もう少しそうしててやんなよ”
と言った。
「はい」
人の親になるというのは多分こういう気持ちなのかとリュミエールは慈愛深くジュ
リアスの髪を優しく撫でた・・・・。皆がその光景を幸せそうに見ているにもかかわらず
ただ1人恨めしそうに見つめる者を除いては・・・・
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