天 穹

vision W

                   「お前の母は何時もあぁなのか・・・。」             宿から出て、てくてくとアドニスの後について行きながらクラヴィスはそんな事            を言った・・・。            「でも、あれはぼくのためを思って言ってくれているんだよ!」             何故か必死にそう訴えかけるアドニスをクラヴィスは不思議に思った・・・。            「あぁ・・・そうなのか・・・」             それきりクラヴィスは何も言えないでいた。            「おや!アドニス、お遣いかい?」             恰幅の良い女性がリンゴを磨きながらとても良く通る声で言った。女性のいると            こるはどうやら果物屋のようだ・・・。            「うん!お客様がいらっしゃっから」            「そうかい。今日は良いチェリーが沢山入ったから奥におじさんがいるから貰って             おいで・・・・」            「いいの?」            「勿論だよ!さぁ行っておいで・・・」             女性はアドニスの肩を優しく押して見送った。アドニスは嬉しそうに笑みを浮か            べると奥に消えていった。            「どうしたんだい?旅のお人」            「良いのか?売り物を・・・」                         クラヴィスは先程の2人の遣り取りで感じた素直な疑問を女性に投げかけた。売り            物を容易くそう儲けも考えず人にあげてしまっても良いのかと・・・            「あはは・・・良いんだよ別にアドニスの家とはず〜っと昔からの付き合いだ!それに             アドニスは可愛いじゃないか、家には子供がいないからね。あの子が私達の子供の             変わりなのさ・・・・」             そう言うと女性は少し悲しそうな顔をした。            「貴女は優しい人なのだな・・・・」            「えっ?変な事を言うお人だねぇ〜。照れるじゃないかおや、よく見れば偉い器量             良しの旦那さんじゃないかい・・・どうだい?旦那さんも何か店の物で良い物があっ             たら持って行きなよ!!」             クラヴィスの背中を叩きながら女性は言った。            「良いのか?私まで貰ってしまったら稼ぎが余計少なくなるぞ・・・」            「良いんだよ!そんなちまちましたこと、今日は気分が良いんだ!ほらっなんか持って             行きな・・・・」             クラヴィスは「では・・・」と幾らか躊躇ったが店の中を見渡してライチを見付ける            と・・・            「では、ライチを少しだけ貰おうか・・・」            「少しなんて言わないでたぁ〜くさん持って行きな!!」             女性は豪快に笑ってライチを袋に詰めた。              奥からアドニスと男が出てきた。この男はきっとこの女性の言っていた【奥にい             るおじさん】なのだろう・・・            「おじさん、どうもありがとう!」            「いいや、またおいで。アドニス」             こちらの男性は女性と違って物静かなタイプのようだ。だが、その雰囲気からも            優しさは満ちあふれていた・・・            「アドニス、おじさんにいっぱいチェリーを貰ったかい?」            「うん、沢山貰ったよ!」            「おまえさん、ケチってないだろうねぇ」            「そんなことするわけがないだろう・・」            「・・・・クッ」             クラヴィスはそれまで耐えていた笑いが耐えられなくなって吹き出してしまった。            自分も変わったものだとそう思う、人が話している姿を見て笑うなどアノ場所に居            る時はしなかったことが今は自然と出来ている・・・            「こんな、店先でみっともない。お客様に笑われてしまったじゃないか・・・」            「お〜や、残念でした。お客はお客でもアドニスの所のお客だよ!この人は」            「そうですか、アドニスのところの・・・」                      何処か引っかかるものの言い方をする。            「あっ!いっけなーい。早くお遣いをして帰んなきゃ・・・」            「そうか・・・そうだったな。」             アドニスは慌てて走り出した。クラヴィスもゆっくり歩いて付いていく。            「おじさん、おばさん!どうもありがとう!!」             少し遠く離れたところでアドニスが叫ぶ。クラヴィスはまだ果物屋の店先にいる・・・            果物屋の夫婦は笑顔で「またおいで」とアドニスに返した。            「それにしても、元気なようで良かった・・・・」            「そうだねぇ・・・あんなことがあってからあそこの家は心配でしょうがなかったんよ」             夫婦はしみじみと心からそう呟いた。            「・・・・それは、どういう意味だ?」             クラヴィスは2人に聞くが2人は言い淀んでいる・・・何か言いずらいことでもあるの            だろうか・・・            「旦那、何かあったらあの子を守ってあげておくれ・・・あの子はまだ自分の身も守れ             ない子供だから。」            「お願いします、旦那。私達では遠すぎて直ぐには駆けつけてはやれない。だから             守ってやって下さい・・・あの子を」             2人は神妙な面持ちで頭を深く下げた。            「ちょっと待ってくれ、お前達の言っている意味が良く分からぬ。お前達がそう言う             事を言う訳を聞かせてくれ・・・」            「そうですね。それはちょうど3年前のことなんですが・・・・」             男性が話し始めたところで、遠くから自分を呼ぶ声がした。            「クラヴィス、何してんの?早く来てよぉーっ。」             アドニスが暫く経っても来ないクラヴィスに痺れを切らして呼びに来たのだ。少            し離れたところで「早く!早く!」と手招きをしている。            「旦那、明日時間があったら夜にでも家に来てくれないかい?その時にでも今の話の             続きを話すよ・・・」            「そうか、分かった。明日の夜にでも伺おう・・・」             クラヴィスはそう夫婦に約束をするとアドニスの方に早足で歩き出した。後ろが            気になって振り返ってみれば2人はクラヴィスに深く頭を垂れたままだった。             何故自分にアドニスを守ってくれと必死に言うのかが分からなかった。果たして            何から守れば良いのかその時のクラヴィスには分かっていなかった・・・・。                                 
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                       旦那・・・・旦那・・・・旦那。凄い違和感だ!だけどこれ以上                       他の呼び名が思い付かなかったのです(T▽T)                        旦那・・・旦那・・・旦那!あ゛っ、ジュリの旦那って事で全                       ては上手く治まりそうvv旦那!お次はどんな事が待って                       いるんだいっ!!