天 穹

vision X

        「クラヴィス、ハイデとエリカと何話していたの?」           アドニスは愛らしい頬を膨らませながら聞いた。          「ハイデ?エリカ?誰だそれは・・・・」           アドニスが誰のことを言っているのか分からなかった・・・。          「さっきこのチェリー貰ったじゃない!果物屋さんの2人だよ!」           (あぁ、そう言えばあの2人の名前を聞いていなかったな・・・。それにしても何故アド            ニスはこの様に拗ねているのだろう。・・・そうか・・・)          「アドニス、私が他の者と仲良くしたから気に入らぬのだろう?」          「ちっ違うもん!そんなことないもん!」           クラヴィスはアドニスが拗ねている理由が分かった。そう子供特有の独占欲。自分が          先に知り合ったのに後から知り合った者と自分以上に仲良く?話していたのが気に入ら          ないのだろう・・・しかも、それが自分よりも大人な者で自分の知らない難しい言葉で話し          ているのならなおさらだ・・・・クラヴィスは「こんな所まで・・・」と笑みを零す・・・           (こんな所までジュリアスと似ているのだなアドニスは、ジュリアスも子供の頃いや            今でもか・・・ふっ。良くこんな事があったものだ他の者と遊べば何時も泣きそうな            顔をして邸に隠っていたな・・・懐かしいものだ)          「なに笑ってんの!クラヴィスてっば!!クラヴィスの言うことは全然違うんだからね!           僕そんなこと思ってないもんっ!」          「そうか・・・?」           クラヴィスは掌をアドニスに向けた・・・          「迷わぬように手を繋ぐか?」          「・・・クラヴィスが迷ったら可哀想だからつないであげる・・・。」          「くくくっ・・・私が迷わぬように頼む。」   頬を膨らませながらもクラヴィスの手をぎゅっと握って離さないアドニスはクラヴィ          スに合わせてゆっくりと歩き出した。           見上げた空は茜色に染まっており、何処か物寂しい雰囲気を感じさせる。そう言えば          聖地にいた時ジュリアスが沈む夕陽を見ながらこう言ったことがあった。          『沈み行く陽は何処か寂しいものがあるなクラヴィス。独りで見ていると泣きたくなる・・・           何故だか分からぬが泣きたくなるのだ・・・。私はこんなに弱い者だっただろうか・・・           そなたに出会って私は弱くなったと思う。前はこんな事はなかったのに・・・』          『それは、お前が人といる喜びを知ったからであろう・・・。共にいる幸せを知ったから           淋しさを感じるのだ。決してその事を恥じることはない・・・人として当然のこと、人           間として当たり前のこと・・・お前は弱くなったのではない。心が豊かになったのだ。           分かるか?ジュリアス・・・』          『あぁ・・・そなたの言う通りだな。私はそなたと共にいる幸せを知ったからこそ、そなた           のいない淋しさも知る。クラヴィス・・・ありがとう』          『なにを言う、私の方こそお前に言わなければならない、【ありがとう】と・・・お前は           私の心に光を灯した。暗く凍てつく闇の心に暖かい光を灯してくれた・・・私はそれで           感情のない人形から人間にヒトになれた・・・お前がいたからこそ・・・』          『ふふ・・・では、私達は共にいなくてはならない究極の対と言うことだな・・・』          『そうだ。私達は離れられぬ対なのだ・・・』           クラヴィスは沈む夕陽をただじっと見ながら昔の事を思いだしていた。          (私が側にいない今、ジュリアス。お前はどうしているだろう・・・淋しさに耐えられず           心を痛めてはいないだろうか・・・私の事を覚えてはいなくとも、ジュリアスの心は変           わらぬだろう・・・この沈み行く夕陽を見てジュリアス・・・お前は泣いてはいないだろ           うか・・・)           無意識の内にアドニスを握る手に力がこもる。          「どうしたの?クラヴィス・・・」          「いや・・・何でもない。早く帰ろう」          「うっ、うん」           アドニスの手を引いて歩き出す。もう少し、もう少しすればジュリアスに逢えるとそ          う想って一歩一歩、確実に大地を踏み締めながらジュリアスに近づく道を進んでいった。             見上げた空は、月と太陽が同じ空で束の間の時を語り合っていた・・・。           
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                                                          回想だけど、久々のジュリアス様登場でした。                              ほんの少しだけでしたけど・・・(汗)                               ジュリアス様、今頃お元気なのかしら?独り?                              茜色の空を見ながら何を想っていらっしゃるのか                              しら。本当に独りなのかしらん?(不気味な一言)