天 穹
vision U
「何故、この様な所に蹲っていたのだ?」 この様な子供がこの広い公園で快活に遊んでいないアドニスを不信に思ったクラ ヴィスは聞いてみた・・・。するとアドニスは悲しそうな顔をしてクラヴィスを見上げ る。 「別になんでもない・・・・」 と言ったきり押し黙ってしまった・・・。これ以上、この事を聞いてももう何も語らな いだろうと踏んだ。 (全く、容姿と同じに性格もジュリアスに似ているな・・・・) クラヴィスは愛しき人の昔の姿がこの少年にかぶり思わず微笑んでしまった。 「クラヴィスこそ、なにをしていたの?」 「あぁ、私か?私は旅をしていてな・・・別の惑星に行くんだがシャトルが来る日が少し 先なのだ・・・。だから、どこかホテルに泊まろうと思っていたらこの時期だ、泊まると ころが無くてな・・・。ここでどうしたものかと考えていたのだ・・・・。」 「どのくらいなの?シャトルが来るまで・・・・」 「1週間だ・・・・。」 「ふぅ〜ん。じゃあぼくの家に来なよ・・・・。ボクの家小さいけれど泊まり宿しているん だ!」 「そうか・・・・だが・・・・・」 「ほら、はやく!!」 そう言うとアドニスはクラヴィスの手を引っ張って歩き出した・・・。 「アドニス!私はまだ泊まるとは・・・・」 「いいから来なよ!」 何時しかアドニスの強引さに負けてクラヴィスはその内静かにアドニスに引っ張られる まま泊まり宿に連れて行かれた・・・。 (アレと同じ顔をしたものを無下にも出来ないからな・・・・) * * * * * * * * * * * * * * * * 暫くするとお世辞でも綺麗とは言えない1つの建物に着いた。 「・・・・アドニス。もしかしてここがお前の言うところか?」 「うん!そうだよ!かーさん!お客様だよぉ〜」 アドニスは扉を開けると部屋の奥に入っていってしまった。クラヴィスは所在が無いので ただ、呆然とその宿の中を観察していた。 (建物は古いがなかなかいいものがそろっているな・・・。アレはここの主の趣味なのだろうか 天使のランプが置いてあるではないか・・・・。なかなか良い趣味だな。) 暫くすると、フロントらしきところの扉が開き1人の女性が出てきた。 「いらっしゃいませ・・・。」 クラヴィスはその女性の容姿にアドニスを見た時と同様に驚く。この女性もまたジュリアス に似ているのだ・・・。瓜二つとまではいかないが、女性特有の優しい雰囲気を出しつつも何かそ の表情には影がある・・・。髪は金髪で1つに編み込んで後ろで括ってある。瞳は深いグレーだっ た。 「・・・・?どうかなさいましたか?お客様。」 「すまない、貴方が私の知り合いにとてもよく似ていたので・・・・」 「そうですか・・・。ところでお客様は何泊でございますか?」 「1週間だ・・・。」 「はい、かしこまりました。お名前をこちらにお願いいたします」 女性はすっと手を名簿帳に伸ばした・・・。 「あぁ、わかった。貴方がここの主なのか?」 クラヴィスは名簿に名前を書きながら言った。 「えぇ、私の主人が亡くなりまして、その後私が商いをしております・・・申し遅れました、私 はイリスと申します。」 「私はクラヴィスだ。1週間宜しく頼む・・・・。」 イリスは笑いもせずに会釈すると「ではお部屋に・・・・」とカウンターから出ようとする。 「かーさん、ぼくが案内するよ。」 「・・・・そう、お願いね」 イリスは奥の扉に消えていった。 「クラヴィス、こっちだよ!」 「ぁっ・・・・あぁ・・・わかった・・・」 アドニスは嬉しそうにクラヴィスを部屋に案内する、その姿を微笑ましく思いながらもクラ ヴィスは何か嫌なものを感じていた。それは先程のイリスに、黒きものを感じた・・・そして何故 かこの少年アドニスにも・・・・。この時、クラヴィスはこの二人がとても深い心の闇に囚われて いるなど思ってもいなかった・・・・。BACK NEXT