ストローク
・・・コツッ。コツッ。・・・・カツンッ。
「ジュリアス様。書類を持って参りました。」
マントを靡かせてオスカーがキリリとジュリアスの執務机の正面に立つ。
「あぁ、ご苦労であった。」
ほんの僅かだが微笑んでジュリアス様が俺を労う。
(っかー!!この微笑みがたまんないぜ!この微笑みが見たいがために頑張って
いるようなもんだよな)
とオスカーは夢ごごち・・・。
「・・・スカー。オスカー。どうしたのだ?ぼうっとして」
ジュリアスが何時まで断っても自分の顔から視線を外そうとしないにオス
カーを不審に思って聞いてくる。
「・・・ッハ。申し訳ありません。」
(イカン。イカン。ジュリアス様のお顔に見取れてしまっていたぜ。はっ!も
しかして今俺はだらしない顔をしていないだろうな・・・)
とオスカー百面相。
「オスカー。本当に大丈夫なのか?」
ジュリアスはオスカーの余りの態度に(休ませた方が良いだろうか)と本気
で考えている。
「・・・大丈夫ってどういうことですか?ジュリアス様!」
「いっいや。そなたがあまりにも様子がおかしいから・・・休んだ方が良いのでは
ないかと・・・。」
オスカーの攻めにしどろもどろになるジュリアス。オスカーはジュリアスの
傍らに立つと幾千万もの女性をとろけさせる腰砕けボイスでジュリアスに今の
言い訳をする。
「貴方のその微笑みを見れば幾ら具合が良くても悪くなってしまいますよ・・コ
コが・・・・」
「ココとは・・・」
「ココですよ。ジュリアス様・・・。」
ジュリアスの白い手に触れるとビクッと震えたジュリアスだが
(そんなとこも可愛らしい・・・)
と心の中でほくそ笑んでジュリアスの手をソコの場所に導く・・・・。
「ココです。ジュリアス様、分かりますか?貴方を見るだけで俺のココはこの
様になってしまうのです。」
オスカーは自分の心臓の上にジュリアスの手を置いた。・・・トクントクン。
少し早めのオスカーの命の音が振動が布を通して伝わってくる。
「伝わっていますか?ジュリアス様。俺の心は貴方にただ会うだけでこんなに
も騒いでしまうのです。」
跪きジュリアスの手に口付けをしながらオスカーは愛しき人の柔らかな膝に
頭を乗せた。
「・・・オスカー。分かった・・・分かったから・・・」
「・・・・・?」
「・・・・離れてくれ」
「何故ですか?」
「いいから・・・早く・・・」
最初は恥ずかしがっているかと思っていたがどうやら違うらしい次第にジュ
リアスは身体を何かに怯えるように振るわせている・・・。
「ジュリアス様?」
オスカーはどうしたのかとジュリアスの両腕を掴む。
「触るなっ!」
パシッとオスカーの頬を叩いた。自分の行動に驚いたように掌を見つめるジ
ュリアス。
(何故、私はオスカーの頬を叩いたのだろう・・・。何故かは分からぬがただ・・
人の温もりが耐えられなかった・・・・)
「申し訳ありません。ジュリアス様・・・私に触られることがそんなにもお嫌なん
て気付きもせず・・・。不愉快な思いをさせてしまって申し訳ありませんでした。」
オスカーは深々と頭を下げると執務室を出ていこうとする・・・。
「まっ、待ってくれオスカー!そうではないのだ!」
誤解を解こうとジュリアスは叫ぶ・・・。
「・・・ジュリアス様。無理をなさらないで下さい。暫く会わない方が良いのかも
知れませんね。」
「オ・・・オスカー・・・」
「失礼します。」
・・・パタンッと言う静かな音と共にオスカーは出ていってしまった。あの悲しそ
うなオスカーの顔が忘れられない・・・。オスカーのことが嫌いだなんてそんなこと
は無い。恋愛に慣れているオスカーには私などでは無くてもいいのだろうと何時
も思っている。その事を言うと何時もオスカーは(そんなことは決してありませ
ん。ジュリアス様でなければ駄目なのです)と言う。その事がどんなに嬉しいか
知れない・・・。それなのに人に触れられると何時も突き放してしまう。
どうして何時もこうなのだろう・・・・
私は人との触れ合いを拒絶してしまう・・・
相手を傷つけてしまう
何故、私はこうなのだろう
優しく接してくれた者を拒絶してしまう
優しくしたいのに・・・・
こんな私はオスカーに愛される資格など
無いのかも知れない・・・。
オスカーのためにも・・・
離れた方が良いのかも知れない・・・
ジュリアスは自分がどうしてこの様な行動を取ってしまうのか本当の理由を知
らないジュリアスはこれ以上オスカーを傷つけないためにもとオスカーとの別れ
を決めていた・・・。
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