蒼 穹 3
     泣いているジュリアスの髪を梳いて落ち着かせると静かに舞うカーテンを潜り
テラスに出た。夜空に瞬く幾千もの星彩は清和に二人を包んでいる・・。ジュリア
スと向き合うとクラヴィスは静かに言った・・・。


    「お前は、この夜空を見てどう思う・・」

    「・・綺麗な夜空だと思うが・・・」

    「それはそうだが・・私はこう思うのだ」


    そう言うとテラスの手摺りに手を掛け夜空を見上げながらクラヴィスは言う・・。


    「・・・宇宙には、幾千万もの人々が居るだろう・・それぞれが違う惑星で、それぞれ
が違う顔、性格で、価値観で暮らしている。だが、どんなにそれらが違う人々も、
どんなに離れている人々も・・・見上げる空は一緒なのだ。ふとした時に見上げる空
は一緒なのだ・・・。分かるかジュリアス・・・」

    「・・・・・」

    「どんなに違う場所に居ようとも、お前と私はこの空で繋がっているのだ・・」

    「・・っ・・・・」

    「この空とこの心で・・・お前と私は繋がっているのだ」

    「・・・ックラヴィス」

    「離れてもお前がこの空を見る限り・・・お前と私は繋がっている・・・」

    「クラヴィスッ」

    「お前が私を忘れない限り・・・心は一つだ」


     私はクラヴィスに抱きついた。ここまで私の事を考えていてくれるこの男に感謝し
・・・そして愛しいと思い・・そてこの男にしてしまうであろうこの後の罪悪感から・・。


    「・・・ジュリアス、下界に降りようとも私の事を今と変わらず愛していてくれるか?」

      「・・当たり前だ。」

    −−−−−−−嘘を吐いた・・・。

    「そうか・・・」


    クラヴィスが嬉しそうに微笑む・・。私を少しも疑ってなどいない、その微笑みが悲
しくて・・、余りにも辛くて・・・本当の事を言いそうになった・・・。


    「それよりも、クラヴィス。そなたの方こそどうなのだ私を永久に愛してくれるか?」

    「愚問を・・。そんな事は決まっているだろう。お前を永久に愛するに決まっている。」

    「本当か?」

    「本当だ。私が闇の守護聖の任を解かれたらお前に会いに行く・・・。」

    「・・・・」


    (その時、私は生きていないかも知れない・・・)と言う言葉は胸の中に閉まっておい
た・・・。声に出してしまうのは余りにも・・・−−−−。


    「それで、お前が嫌だと泣き出してしまうまで共にいよう・・・」

      「クラヴィス・・」

    「ジュリアス、それまでお前は待っていてくれるか?」

    「もちろんだ」


    −−−−−−・・・また、嘘を吐いた。


    「私を忘れずに待っていてくれるか?」

    「あぁ、お前の事は忘れない・・・」


    私は自分のしている事の罪悪感から涙が溢れているのを止める事は出来なかった・・・。
後から、後から涙が溢れて・・クラヴィスの姿も霞んで見えなくなってしまう位に・・・。


    「どうしたのだ・・・ジュリアス。何故泣くのだ・・・」

    「・・・・・・っ」

      「お前を少しの間、1人にしてしまうが直ぐにお前の所に行くから・・。必ず探し出す
から・・。ほんの少しだけ間待っていてくれ・・・」

    「・・・っクラヴィス」

    「ん・・・何だ?」

    「お前を・・・お前をずっと待っている・・。お前を忘れず、この空を見上げ・・何時まで
も、待っている・・・」


     私は最後の嘘を吐いた・・・。私の目の前に居るこの愛おしい男に・・・。








   
−−−−−−嘘を吐いた・・・
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