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私がこの司る力の衰えを感じたのはつい先日の事だった。目映い朝日 と共に訪れた驚く程の喪失感。ついにこの日が来てしまったのだと己で 感じた。それは、守護聖の地位に着いてから何時も影の様に付いてきた 事実・・。衰えた者は,次の未来のある者へ・・。それが現実。それが、 定め。幾ら守護聖の長だとしても、それは変わらない。 「・・アス・・・ジュリアス?」 先程から一向に喋ろうとしないジュリアスを心配そうにロザリアが覗き 込む・・。 「どうしたのですか?御気分でもすぐれないのですか・・?」 そう言えば、今は退任後に後に付く新しい光の守護聖の事をロザリアと 話し合っている最中だった。私とした事が・・今は仕事で悩んでいる場で は無い。 「否、そんな事はないロザリア。心配を掛けたな・・」 そう言うと後任の守護聖の資料に手を掛ける。 「本当に大丈夫なのですか、最近は引き継ぎの事が忙しくてあまりお休みに なっていないのでは無いですか?」 「安ずるなロザリア、私は大丈夫だ。」 ジュリアスは万人を魅了するであろう儚げな笑みを浮かべる。その笑みが 余りにも優しくて、悲しくてロザリアは胸が締め付けられた。眼に熱いもの が込み上げてくる・・。自分が女王候補生だった頃からジュリアスには、今 は女王となったアンジェリーク同様に好意を寄せていた・・。だが、どちら の心も受け止めては貰えなかった。・・・それは・・ (・・それは、この人の心の中にはすでに他の人で埋まっていたから・・・。 だけど・・。この人は明日、聖地を・・・。) そんな事を思い出していたら、眼に溜まっていたものが零れ落ちそうにな った。 ( 泣くわけにはいかない。私以上に辛いであろうジュリアスの前では・・。 この人も辛いのに悲しみや涙を気丈にも表に出さないこの人の前では・・・ 。泣いてはいけない・・。) 「そうですか、でも気を付けて下さいね。貴方の今の躰は前の様には行きま せん。貴方の持つ力を次代の者に受け渡そうと言う時なのですから・・。 病に罹り難い前とは違うのですよ。もう少し、御自分の躰を大事にして下 さい」 辛辣な眼でロザリアはジュリアスを見る。 「この様な時に『ありがとう』と言うべきなのだろうな・・」 今迄、余り自分の感情を表に出さなかったジュリアスは恥ずかしそうにい った。 「・・・ロザリア。私の躰を心配してくれているのだな・・。感謝する。あ りがとう・・・」 「・・・・・」 「どうしたのだ?ロザリア・・」 −−−泣いてはいけない。絶対に−−− 「本当に、行ってしまうのですか」 「あぁ、守護聖では無い私が聖地に居ても皆が混乱するだけであろう」 「それはっっ」 「いいのだロザリア。これは、守護聖という地位に付いた時から分かってい た事だ。」 「貴方がそう言うなら・・お止めしても無駄ですわね・・。寂しくなります ・・・貴方がここから居なくなってしまうのは・・」 「ロザリア、次代の光の守護聖の事、皆の事、陛下の事、・・・頼んだぞ」 「えぇ、もちろんです」 ジュリアスを心配させない様に満面の笑みを浮かべる。 「さぁ、全てやるべきものは終わりましたね。まぁ、もうこんな時間ですの ね。終わりにしましょうジュリアス。」 「あぁ、そうしよう。それでは失礼する。」 そう言って席を立ち部屋を退出しようとしたジュリアスを呼び止めた。 「ジュリアスッ。陛下がお話があるそうです。明日の最後のお別れの前に陛 下のもとにいらして下さい」 「・・あぁ、分かった」 |