スモルニイ学園 幼稚部3







 ・・・・・キィコ。・・・・キィコ・・・・キィコ。今は使っていない旧稚舎の古いブランコが寂しそ
うに揺れていた。そのブランコに乗っている子供もどこか寂しそうだった・・・。


(もう、きらわれちゃったよね・・・。クラヴィス、だってあんなに酷いことしっちゃったん
だもの・・・。もうあそんでくれないよね。だってわたしとあそぶのあきたっていわれたし・・・。
リュミエールとあそんでいたほうがたのしそうだし・・・また、ひとりになっちゃった・・・・。)


 ぽたぽたとジュリアスの瞳からとても綺麗で透明な涙が流れてくる・・・。後から後から、ジュ
リアスのズボンを濡らしていく・・・。その時スッとぼやけた視界の中に何か四角い白いものが現
れた。何かと思ってジュリアスは顔を上げると目の前にはカインが立っていた


「・・・ジュリアス。これを使いなさい・・・・ほら、」


 カインは優しく白い柔らかなハンカチで頬に流れる涙を拭いた。そしてジュリアスを抱き上
げるとカインはブランコに座り膝の上にジュリアスを乗せた・・・。


「どうしたんですか・・・・ジュリアス?」


 フワリ・・・フワリとブランコを揺らしながらカインは聞いた。


「クラヴィスにきらわれちゃった・・・・」

「・・・・どうして?」

「いつも、いっしょにいたから・・・わたしとあそぶのはあきたんだって・・・おっ友だちがいなく
なっちゃった・・・。わっ、わたしはひとりぼっちになっちゃった・・・・」

「オスカーは?友だちじゃないの・・・・」

「おっ、オスカーとは仲がいいけれど・・・オスカーはクラヴィスみたいにあそんでくれないか
ら・・・」


 そうか・・・とカインは思った。確かにジュリアスとオスカーは仲が良い、だがどこかオスカ
ーはジュリアスに一線を引いたところがある。それを越えてジュリアスと仲良くなろうとはし
ないのだ・・・。確かにジュリアスの友だちと言える子供はクラヴィスくらいだった・・・。


「もう・・・幼稚園に来たくない・・・・」


 ポツリとジュリアスが涙の間からそんなことを言った・・・。


「どうして?幼稚園がきらいなのか・・・・」

「ううん。きらいじゃないけれど・・・。幼稚園に来てもお友だちがいないんじゃたのしくないか
ら・・・だから」

「だから、幼稚園に来たくないのか?」

「・・・・・うん」


 金色の小さな頭をコックリと揺らした。


「じゃあ、友達がいれば幼稚園にくるのか?」

「・・・・うん」


 カインは今迄漕いでいたブランコをぴたりと止める。


 「じゃあ。先生と友達になろう!ジュリアス・・・。」


 ジュリアスは驚いたように頸を後ろに回してカインを見た。


「先生と!?」

「そうだ・・・。先生と友達になろう!ジュリアスは嫌か?」


 カインは真っ直ぐに前を見ていた顔をジュリアスの瞳が見えるように後ろを向いているジュ
リアスの顔に近づけた・・・。


「ジュリアスが嫌なら、悲しいけれど先生は・・・・」

「ううん!!先生と友だちになりたい!」

「そうか、嬉しいな。仲良くしましょうジュリアス」


 ブンと大きく止まっていたブランコをカインは漕いだ・・・。天に届きそうなくらい、大きく。
大きく。力いっぱいカインはブランコを漕いだ。

「先生!」

「なんだ?」

「お空にとどきそうだよ!」


 頬を赤らめながらジュリアスは嬉しそうにそう言った。少しだけ元気になったジュリアス
をカインは安心しながら、また大きくブランコを漕いだ。


「そうですね・・・今にも届きそうだ・・・。」

「先生!明日ねクラヴィスにごめんなさいする。・・・手をひっぱってごめんねって!」

「そうですね!そうした方が良い」

「うん!」


 ブランコは茜色に染まった木々に向かって空高く漕ぎだした。小さな影と大きな影がブラ
ンコの動きに合わせて影が伸びたり縮んだりしていた・・・。










 家に帰ったジュリアスは夜ご飯を食べると直ぐにお風呂に入りパジャマに着替えてベッド
に潜った。ジュリアスの横には黒いくまのぬいぐるみがあった・・・そのくまはジュリアスの
誕生日の時に両親が買ってくれた物だ・・・名前は『クラヴィス』と付けた・・・。黒い毛足の長
いくまがクラヴィスみたいだったからジュリアスはそう付けたのだが、恥ずかしいのかジュ
リアスは誰にもくまの名前を誰にも言っていなかった・・・。ジュリアスはギュウッと『クラヴ
ィス』を抱きしめると明日言うことを『クラヴィス』に言った・・・。


「ごめんね・・・クラヴィス」


 抱きしめた『クラヴィス』の腕には何だか不格好に白い包帯が巻かれていた・・・。それは、
(クラヴィスが痛がっていたから・・・)とジュリアスが自分で『クラヴィス』に巻いたものだ
った・・・。


「あしたはぜったいにクラヴィスにごめんねするんだ・・・」


 ジュリアスはそうくまの『クラヴィス』に言うとスヤスヤと眠りについた・・・。




  
続く