ずっと側で見守って
大切にして
優しく育てて来たのに
それをあの男がっ
【 − モノ − 六 】
辰は押入に閉じこめた鉄が静かになったのを確かめる
すぅ・・・・すぅ・・・・・
と子供らしい寝息が聞こえてくる・・・。
「ごめんな・・・鉄」
押入の襖に額を付けて中にいる鉄に謝ると辰はその部屋を出た。屯所を辞
めるのだと言いに行くために・・・・そもそも、鉄と2人で生活していくために
ココに入ったのだ。鉄を幸せにしたい為に・・・・それなのに鉄があんな目にあ
っていたのではココに来た意味がない。
絶対に辞めてやるこんな所・・・・っ
そう心を堅く決めて辰は廊下を曲がった所で反対側から来た人物と衝突し
てしまった。
ドンッ
「いつぅーっ。すみません」
相手を見ずに頭を下げたが相手からの言葉が無いことを不審に思い顔を上
げると憎くてたまらない相手が其処に居た。
「アンタッ!」
日頃、上司に対する言葉遣いを云々と言っている辰だが今はそんなことは
忘れて感情のままに動いてしまっていた。ぶつかった相手はそう・・・土方だっ
た。お互い次の言葉が出ないまま睨み合う
「何処に行くんですか?土方さん・・・・」
自分の中の怒りの感情が高まりすぎていて声が震える・・・怒りを外に出すこ
とは・・・・・・・苦手だ。
「・・・何処へ行こうと関係ないだろう?」
関係ないはずがない。この先には鉄が居る部屋しか無いのだ・・・。
「関係がないとは言わせませんよ・・・・」
「・・・・・っ」
俺の言葉に土方さんの怒気が強まって行くのを感じる・・・。回りはピリピリ
と触れば切れんばかりの殺気を帯び・・・先程まで庭の木々で囀って居た鳥達の
気配もしないほどだった・・・。殺気を感じだ鳥達は危険を感じ飛び去ってしま
ったのだろうか・・・・・・・?
「言葉も出ないですか?別にそれでも良いんです・・・俺達は此処から出てい
くのでもう貴方とも関係が無くなりますし・・・」
「なんだとっ!!」
「だから、此処を出ていくと言ったんです!」
「そんなことは許さない。」
何時までもビクビク何てしていられない・・・・。
何時までも嫌なことに目を瞑り避けては居られない・・・・
「此処から先には何があっても通すわけには行きません・・・・例え貴方に斬ら
れたとしても・・・・・・・」
俺は鉄を守りたい・・・・・・・
震える膝と戦いながら、辰之助は両手を握りしめると瞳に力を込めて土方
を睨み据えると・・・。土方の振り上げられた腕がゆっくり自分目掛けて迫っ
てくるのが見えた。
鉄・・・・・・・・っっ
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