ヒリヒリと手が痛む


           どうしてだろう・・・

    

           チクチクと心が痛む


           どうしてなんだろう・・・・・・







          【 − モノ −  参 】








           「・・・・・・沖田さん・・・・・・沖田さんってば・・・・そんなに引っ張らなくても大丈夫だっ
            てば」

           
            沖田は鉄の腕を掴んでズンズンと歩いていた。


           「え?あぁ・・・・ごめんなさい・・・痛かったですか?」

           「うぅん・・・痛くないけど・・・・」

           

           「ちょっとここで待っていて下さいね」と言うと沖田は鉄を縁側に残して部屋の奥
           へと消えた・・・。やることのない鉄は縁側から足を垂らしてぶらぶらとさせていた。
           程なくして沖田が手桶と薬箱らしき物を持って鉄の横に腰を下ろした・・・


           「さぁ、手を出してください。鉄之助君」


            言われた通りに火傷していた手を出すと水で濡れた手ぬぐいで煤けた部分を洗っ
           てくれた・・・熱を持った患部がヒンヤリと気持ちが良い・・・


           「こんなに酷く火傷して・・・どうして早く冷やさなかったんです」

           「ごめんなさい・・・・」

           「怒ってるんじゃないんです・・・理由を聞かせてもらってもいいですか?」

           「・・・・・・・・・・・」


            ぐっと口を紡ぐ鉄は俯いてしまう。


           「理由・・・・言えませんか?」

           「・・・・・・・・」


            見つめる沖田と俯く鉄・・・・沈黙は長く鉄が喋る気配もない。その時、ドタドタと
           激しい足音が聞こえてきた。


           「鉄っ!大丈夫かっ!?」


            必死の形相で走ってくる辰と


           「鉄之助君・・・・」

             
            辰よりも遅れて歩いてくる山南の姿があった。


           「どうしたんですか?2人とも・・・・」
           
           「どうしたもこうしたも無いですよっ!土方さんが鉄に酷いことっ!」

   
            辰は鉄の右手を取ると沖田の用意した塗り薬を患部に塗った


           「たっ、辰兄・・・・それは」


            辰の言葉を遮ろうと鉄が口を挟むが辰は声を怒りの余り声を張り上げる


           「土方さんが鉄に煙管と投げつけたんですよ!茶を出せってっ挙げ句の果てには自
            分の小姓には何をしても良いだなんて・・・横暴なことをっ!」

           「そんなことを・・・土方さんが・・・・」

           「副長ってそんな事も許されてるんですか!小姓ってそこまで我慢しなきゃいけな
            いんですか!こんな・・・・こんな火傷させられても我慢して・・・小姓って気分発散の
            為の痛めつけられる専用のモノなんですか・・・・それなら俺・・・・そんなんなら俺・・・
            ココ辞めて鉄を連れて出ていきます・・・・」


       
            ぎゅぅっと鉄を抱きしめた。


           「辰兄・・・・違うよ・・・俺が・・・俺が勝手に火傷したんだ・・・・副長は悪くないんだってば」

           「・・・・・・鉄」

           「分かりました・・・・・・・・」


            スゥッと沖田が立ち上がる


           「僕が今から土方さんと話をしてきますね・・・」

           「沖田さん・・・・」


            辰に抱きしめられたままの鉄が不安そうに沖田を見上げた。


           「大丈夫ですよ・・・鉄之助君。こんな事・・・土方さんに2度とさせませんから・・・」

           「ちがう・・・ちがうんです」


            鉄は2人が自分のせいで別れてしまうのでは無いかと必死に沖田を引き留めようと                 
           するが辰に抱きしめられてるせいで身動きがとれない
 
            皆、大好きなのだ・・・2人が大好きなのだ・・・・だから幸せでいて欲しい・・・。2人が
           好きあっている恋人同士なら自分のせいで別れて欲しくない・・・


           「鉄之助君」


            沖田はしぃっと鉄の唇に人差し指を添えると踵を返して行ってしまった。


            違う・・・・違うよ・・・・誰も悪くなんて無いんだ・・・悪いのは全部俺のせい・・・だから
           沖田さん行かないで!


            鉄の叫ぶ声は沖田には届かなかった・・・。