DAHLIA 4
ダリア
                    「そう言えばジュリアス・・・・少し様子がおかしかったわね・・・・」               暗い寮の廊下を歩きながらクラヴィスは自室へと帰っていた。              「何だかとても寂しそうな顔をしていたし・・・。」               何かあったのかと色々考えを巡らしてみても今のクラヴィスには何も思い付              かなかった。今日は喧嘩も何もしなかった・・・・。遅刻も寝坊もしなかったのに              ジュリアスは様子がおかしかった。大好きなキャメリアのケーキも食べなかっ              た。クラヴィスは部屋に帰ったら部屋に居るであろうジュリアスに何があった              のか聞くつもりでいた。              「・・・・ジュリアス?」               寮の自分の部屋を空けて部屋に中に居るはずのジュリアスに声を掛けたが部屋              にはシンと静まる空気と月の光だけがそこに滞在していた。               自分よりも随分前に帰ったはずなのにジュリアスが居ない・・・・。寮の部屋には              何時もジュリアスが居た。窓に向かい備え付けられている勉強机は扉を背にして              置いてあり自分が【ただいま】と声を掛ければ何時も先に帰っているジュリアス              が勉強机に向かっていて声を聞けば【お帰り、クラヴィス】と微笑みかけてくれ              るのが何よりも一番好きだった。陽の光を浴び、夕陽を浴び、月光を浴び、ジュ              リアスは何時も振り返り【お帰り】と言ってくれたのだ・・・。ジュリアスの金糸              が光を受けキラキラと輝くのが大好きだった・・・・。              「何処に行ったのかしら・・・・」               何時も居る人が居るべき場所にいないととても落ち着かない・・・。クラヴィス              は、ジュリアスと仲の良い向かいの部屋のリュミエールの所に居るのだろうと              向かいの部屋の扉をノックした。              ・・・・・コンコンッ。                             「・・・はい」               部屋の中から出て来たのは、ルヴァだった。              「クラヴィス、どうしたのですか?」               おっとりとした口調で話すルヴァは、今図書館から帰ってきたという。ブルー              グレーのサラサラとしたショットカットの髪に学園の制服そして頭にはベレー帽              を被っていた。              「どうですか?今お茶にしようとしていたところなんです。リュミエールがお湯               を貰いに食堂に行っているのですが・・・・」               クラヴィスの話しも聞かずルヴァは強引に椅子に座らせた。テーブルの上には              ケーキボックスが乗っておりルヴァに聞けば「リュミエールが頂いてきたのです              よ」と言った。クラヴィスの聞きたいことはルヴァ達の部屋に入ってしまったこ              とで解消してしまった。この部屋にジュリアスの姿は無かったのである。              (ここじゃないとするとオスカーとオリヴィエの部屋かしら)               今はジュリアスを探していて、ルヴァ達とお茶をしている場合でないクラヴィ              スが席を立とうとした時にリュミエールがポットを持って帰ってきた。              「あら、クラヴィスさん。どうなさったのですか?」               後輩にも好かれる優しいリュミエールは、ニッコリと笑うとポットをテーブ              ルに置いた。               「いいえ、ジュリアスを探しに来たのだけれどここにはお邪魔していないみ                たいだったから、そろそろ失礼しようと思っていたところよ・・・」               と言って部屋を後にしようとした時にリュミエールが声を掛けた。               「クラヴィスさん、ジュリアスさんにケーキありがとうって伝えて下さい」               「ケーキって?」               「いやですわ、クラヴィスさんたら・・・。今日の自由選択でジュリアスさんが                お作りになったチーズケーキをお裾分けしていただいたの・・・・。クラヴィ                スさんもお食べになったでしょう?ジュリアスさんはクラヴィスさんの為に                作っていたんですもの・・・・早く渡すのってジュリアスさん急いでアレンジメ                ントのお部屋に行ったでしょう?」                 「それ、本当なの?」               「えぇ、ほら・・・・」               そう言ってリュミエールはテーブルの上にあったケーキボックスを開いて中              のチーズケ−キを見せた。               「ごめんなさい、急用が出来たわ。」               「あっ!クラヴィスさん」               クラヴィスはそう言うとリュミエール達の部屋を後にした。               ジュリアスったら、私がセイランのケーキを食べてたからあんな嘘を吐いたん              だわ・・・。苺のババロアを作っただなんて・・・。あんな寂しそうな顔をさせていた              原因は私。ジュリアスの笑顔を奪ったのは私なんだわ・・・。               前にもこういう事があった、私の誕生日の時にジュリアスのプレゼントと他の              プレゼントが一緒になってしまって先にプレゼントを渡した子をみてジュリアス              が自分のプレゼントを隠したんだっけ・・・。あの時プレゼントを忘れた。って言              ったジュリアスを「何て子なんだろう!」ってジュリアスを詰ったれど・・・。              本当はジュリアスだって心の込めたプレゼントを渡したかった筈なのに・・・。私              とプレゼントを贈った子のことを考えて・・・               昔の事を思い出す度に自分の後悔の念で心が押し潰れてしまいそうだった。               「オスカー、オリヴィエ」               オスカーとオリヴィエの部屋に急いで行きドアをノックした。一刻も早くジュ              リアスに謝りたいために。               「なーに?クラヴィスさん・・・」                              少し不機嫌そうに黒のノースリーブのセーターに黒いサブリナを履いたオスカー              が顔を出した。実はこの2人は余り仲が良くはない・・・。2人とも仲の良いジュ              リアスを互いに取られてしまうかも知れない・・・と思っているからかもしれない。               「ジュリアス、お邪魔していない?」               「ジュリアスさん?来ていないわよ・・・。オリヴィエがもう少ししたら帰って                くるから一緒に来るかもね。」                そうオスカーは素っ気なく答えた。               「何かあったの?ジュリアスさんと・・・・」               「貴女には関係の無いことだわ・・・・」               険悪な雰囲気が流れる中、廊下の向こう側から騒がしい足音がした。こんな              気分が最悪な時に何てことなのだろう・・・と2人がその足音のする方向を見ると              華美な服装のオリヴィエが走ってきた・・・・隣を見れば誰も居ない。ジュリアス              はオリヴィエとは一緒にいなかったのだ・・・・。               「どうやら、貴女のカンは外れたようねオスカー」                               クラヴィスが嫌味な言葉を残して去ろうとした時、オリヴィエが大きな声で              呼び止めた。               「ちょっと、待ってよ!クラヴィスッ、大変なの!!ジュリアスが・・・・」               そのオリヴィエの尋常では無い焦りにクラヴィスは足を止めた。               「クッ、クラヴィス。大変なの・・・・ジュリアスが・・・ジュリアスが・・・・」               走ってきたせいかオリヴィエの言葉は息が切れて続かない。               「オリヴィエ、ジュリアスがどうしたのっ?」               深く深呼吸をするとオリヴィエは一気に喋った。               「ジュリアスがあのアリオス先生のところに行ったって、下級生の子が見たっ                て・・・・大変だよ!クラヴィス、ジュリアスが危ない!!」               「何ですって!!アリオス先生のところに行ったですって・・・・」               その言葉に愕然としクラヴィスは動けなくなってしまった。生物教師のアリ              オスと言えば人当たりが良く、授業も楽しくて人気の先生なのだがその裏では              生徒に手を出す教師としてごく僅かな人数の人々に知られていた。                                      ジュリアスはその事を知らない。教師は神聖な職業であり、そう言う人がな              るものだと人を疑うこと無い白いままのジュリアスはアリオスがその様な人物              だとは知らないのだ・・・・。               「クラヴィスッ、ちょっとどうするのっ?」               呆然として動かないクラヴィスをオリヴィエが肩を揺さぶって揺り動かす。               「あっ、ジュリアスのところに行かなくちゃ・・・・」               そう言って走り出したクラヴィスの後をオリヴィエとオスカーが付いて走る。               (ジュリアス、貴女に何かがあったら私は・・・・私は・・・・)               走るクラヴィスの心臓はドキンドキンと激しく大きくなっていた。シンと静              まる夜の闇に大きく・・・・大きく鳴り響いていた・・・・。        





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             やばいですな・・・。ジュリアスさん、誠にやばいですよ!          早く助けなければジュリアスさんが・・・・。           ・・・と言うわけで最初は「続くか分かんな〜い?」と言っ          ていたのにもう4話も続いてしまいました(汗)早いですね。          問題のオスカーも出てきたことですし(笑)オスカーとクラ          ヴィスはシリアスモードの険悪です。あぁ、こんなシリア          スな険悪モードの2人は久々に書いたカモ・・・。あぁ、楽し          いvv