麝香連理草
- scar Z-
          「なっ、何よそれ。聞いていないわよ私達は!」                       語気も荒くオリヴィエはルヴァに詰め寄った。           「誰にも言わないように言われていましたから・・・それに私がこの事を知ったのは、昨            日のことです。」           「そんな!じゃあ、ジュリアスはもういねーって言うのかよ!」           「えぇ・・・もうこの聖地にはいません。」           「・・・ジュリアスが・・・・」            それまで一言も喋らなかったクラヴィスが口を開いた・・・。           「っふ、ルヴァ。お前の戯言には付き合っていられぬ・・・ジュリアスがいないなどと、            いい加減にしろ・・・」            そう言うとクラヴィスは、オスカーの部屋を立ち去ろうとした。           「待って下さい!クラヴィスッ!!戯言ではないのです、本当の事なのです。ジュリア            スは・・・ジュリアスは・・・・」           「聞きたくはない!」            扉を開けようとノブに手をかけた時、向こう側から扉が開かれた。部屋の中に入っ           てきた研究院の者はエルンストに近寄ると何やらヒソヒソと話し始めた・・・エルンスト           の眉が寄せられる・・・           (止めろ!それ以上話すな!)クラヴィスはそう必死に心の中で叫んでいた。身体           は何かに縛られたように動かない・・・            研究院の者は一例をすると部屋を出ていってしまった・・扉の近くにいたクラヴィス           はその研究員が去る時に頬を伝う一筋の涙を見た。エルンストはしゃがみ込んでいる           ルヴァの近くに寄りまた何か密かに話している。           「えっ!?・・・・・そうですか・・・・」            そう言ったきり、ルヴァは何も話さなくなった。部屋には重たい空気が流れる、だ           が誰も何も言わなかった・・・いや、何も言えなかった。絶句しているルヴァを見れば何           を言われたのか分かるからだ・・・。           「・・・ル、ルヴァ様。研究院の者はなんと・・・?」           「えぇ、何でもないですよ・・・リュミエール・・・・なんでも・・・ないのです・・・・」            沈黙を破りリュミエールがルヴァに話しかけるがルヴァは(何でもありません)と           口を閉ざす。           「今さらナンなんだよっ!!もう隠し事したってしょうがねーだろっ!!ルヴァ、今のは            ジュリアスの事だったんだろ!」            ゼフェルがルヴァの胸ぐらを掴んで睨み付ける。何時もなら止めに入る者達が止め           には入らなかった・・・いや、正確には止めに行けなかった・・ゼフェルのあまりの激し           さし・・・床に足が縫いつけられた様に動けなかった。            ・・・止めろゼフェル。止めろ・・・私はもう何も聞きたくはない。            クラヴィスは扉の側に佇んだまま動けずにいた。           「・・・・ジュ・・・・ジュリアスが・・・・ジュリアスは・・・」            その言葉を聴いてそこにいる全ての守護聖は感じ取った・・・ジュリアスは逝ったのだ           とルヴァ正色な態度を忘れ声を震わすその態度で全てが分かった。だが、ルヴァは           言葉を続けようとする・・・           「ジュリアスが・・・惑星で・・・・」           「もういい、もういいよルヴァ。分かったから、私達全部分かったから・・もう・・いい            から・・・ルヴァ。お願いだから・・・もう止めて・・・」           「・・・オ、オリヴィエ・・・ッ」            ルヴァのこれ以上の心の哀号を見てはいられなかった。泣き崩れるルヴァをオリヴィ           エが優しく包み込む・・・。           「・・・最後までルヴァは話していない。私は信じないぞ絶対に・・・」                       クラヴィスは部屋を去ろうとする           「クラヴィス!ルヴァの気持ちも考えてやりなよ!今、どんなに・・・・」            それから先の言葉をオリヴィエは呑んだ・・・(今、どんなに辛いか)それは多分クラ           ヴィスだろうから。一番。今辛いのはクラヴィスだろうから・・・オリヴィエは口を閉ざ           し何も言えなくなってしまった・・・オリヴィエだけではなく他の守護聖も何も言えなく           なってしまった・・・誰もこんな事信じたくはないのだ・・・。           「・・・では、私は・・・・」            そう言ってクラヴィスは身を翻して扉を開けようとした時に女王の使いの者が扉を           開けた・・・。使いの者は、部屋の中を見渡し深々と一礼すると少し瞳を伏せた・・・           「謁見の間・控室までお越し下さい。陛下よりご命令を承りました、ルヴァ様・オリ            ヴィエ様・リュミエール様・オスカー様・ゼフェル様・ランディ様・マルセル様・・            ・・・・クラヴィス様。1人も欠けることがないようにと仰っております。」            使いの者の余りの有無を言わせないその眼差しに皆、呑まれてしまった・・。命に従わ           ないなどとは決して言わせないと言った態度だった・・・反発し、何時もなら従わないク           ラヴィスでさえもがその使いの者の命に・・女王の命に従いオスカーの館を後にした・・・。                                          
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