麝香連理草
- scar X-
           「以前見た時は美しい星だったのにな・・・」             ジュリアスは惑星に着くと以前見た場所とは全く違う惑星にいるように感じた・・            前に来た惑星と同じ所に来たのにそう感じられずにはいられなかった、活気のある            とても良い星だった・・・人々が信じ合い、助け合い、愛し合い・・・とても良い星だっ            た・・・それがどうした事だろう、何故この様になってしまったのだろう・・・。人々が            憎しみ合い、殺し合う。血塗れの絶頂。殺戮の上の快楽。残骸の山。腐り果てる肉。            転生出来ない魂。今生に残る思念。それでも生き残る者に成される試練。             そこは戦場だった・・・。目の前に小さな子供の死体がある、この世に未練を残した            のだろう小さな目を見開いて空を見ている・・・もう何も写さなくなった瞳は曇るばか            りで何も写してはいない。ジュリアスはその子供に近づく・・・・。            「すまない・・・。私には何も出来ない、この様なことしか出来ぬが許してくれ・・・。」             ジュリアスは子供の瞳を手で優しく覆い瞳を塞いだ・・・。そして、胸の飾りを外し            肩から流れる白い不浄の布を子供に掛けてやる・・・。             少年の瞳は堅く閉じられた・・・。            「何もしていない罪無き子供までこの様な・・・・」             胸が痛くなった、守護聖として何を自分はしてきたのだろうと・・・。全ての民が幸            せになれるようにと力を注いできた自分は何をしていたのだろう・・・。             民?・・・民。自分も民ではないか、人を民を見下していたのかも知れぬ・・・私は・・            守護聖の長と言うだけでまるで自分が天地創造の神のように振るまっていたのかも            知れぬ・・・。傲慢な態度の結果がこの様な事になってしまったのだと思う・・・。だから、            クラヴィスも私に愛想を尽かしてしまったのだ・・・。人の上に人を作って皆を見下ろ            していた私だから・・・。            「すまぬ・・・すまない・・・全て私のせいだ・・・」             目の前に横たわる子供を抱きしめるとジュリアスは何時までもそうしていた・・・。             一方、聖地では皆何も知らず午後の時間を過ごしていた・・・。守護聖達はそろそろ            一休みをしようと思った時、オスカーが倒れたと言う知らせが入り守護聖がオスカ            ーの館に集まっていた・・・そこには珍しくリュミエールに連れられたクラヴィスさえ            もいた・・・それは、ここに来ればジュリアスに会えると思っていたから。自分では昨            日あんな事を言ってしまって会いにくい・・・だから、この場所でジュリアスにクラヴ            ィスは会えると思って来ていたのだ・・・。            「一体どうしたのさ!オスカーは・・・」             オスカーの館でランディ・マルセル・ゼフェル・リュミエール・クラヴィスに会っ            たオリヴィエはオスカーの休んでいると言う部屋に入ってきた・・・。そこには枕元に座            っているルヴァがいた。            「ルヴァよ−。オスカーが倒れたって本当なのか?」             ゼフェルが他の守護聖の中を掻き分けて一歩前に出るとそこには無表情のルヴァ            と寝台に静かに寝ているオスカーがいた。            「えぇ・・・少しね具合が悪いようです・・・」             ルヴァは一切の感情を無くして無機質に答える・・・。何時も笑顔を絶やさないルヴ            ァに皆違和感を覚える・・・。            「どうしたの?ルヴァ、何か変よ・・・」            「何かあったんですか?ルヴァ様」                         オリヴィエとマルセルは訪ねるがルヴァはただ一言〔何でもありませんよ。〕と            また無機質に言うだけだった・・・。その時、オスカーの部屋の扉がノックされてエル            ンストが顔を出した・・・。            「ルヴァ様、少し宜しいですか・・・」            「えぇ・・・・」             何処か緊張感の漂う2人を先程よりもより一層不信感を深めた・・・。             子供を抱きしめていたジュリアスはやがてその身体を離すとスクッと立ち上がり            この星の神殿へ足を進めた神殿へはここから直ぐ、10分ほども行ったところか・・・            戦渦の中を自分の気配を消して進む。一本隔てた道路の向こう側では殺戮の銃が乱            打されている・・・今何人の人々が逝ったのだろう・・・ジュリアスは一刻も早く神殿に            急いだ・・・。気配を殺して、自分が最後の仕事をする前に逝かぬように・・・最後の仕事            ぐらいまともにやれるように・・・。            「・・・・ここか・・・・」             やっとの事で神殿に着く・・・神殿は建てられてから間もないのか真っ白な建物だっ            たようだ・・・今は爆撃で受けたのか半分は崩れ落ちで無惨な形になっている。どうに            か扉は無事の様だ、建て付けの悪くなった扉を開けると中は砕け散った色とりどりの            ステンドグラスが散らばっている・・・神殿の側面の壁全てが、ステンドグラスだった            のだろう・・・今は半分しか残っていないが・・・神殿の中を光が照らしている・・・何故か            と思って見上げてみれば爆撃で攫われたのだろう・・・天井の半分がぽっかりと無かっ            た・・・。空は・・・・空は・・・・            「素晴らしい、青だな・・・・」             多分これが自分の見る最後の空だろう・・・。ジュリアスは紺碧の瞳を細めながらそう            思った・・・。             ジュリアスは最後の仕事を始める為に両手を天に上げる・・・。光がステンドグラスを            照らし神殿内は色とりどりの光に包まれる。ジュリアスの手の中から光が発せられる            その時、背後の扉が勢い良く開き1人の男が飛び込んでくる男はジュリアスに銃を向            ける・・・・            ガァーーーーーンッッ!!             銃声の激しい音にジュリアスは貫かれた・・・            まだ逝くわけには行かない・・・最後の仕事が残っている。私がしなければ私の次に力           のある「あの者」が来ることになってしまう・・・。ここで逝くわけにはいかぬのだ!「あ           の者」には愛する者がいる!だから、ここで私がしなければならない!今逝くわけには           いかない!            ジュリアスは傾ぐ身体を何とか押さえ、最後の力を振り絞る・・・背後の男はまた引き           金を引きまたジュリアスを貫く・・・。ジュリアスが力を解放すると辺りは光に包まれ、           ジュリアス自身もまた光に包まれた・・・。           「・・・・・ク・・・・ラヴィ・・・・・・・」            ジュリアスの掠れる視界の中で見たものは、色とりどりに輝くステンドグラスの天           使だった・・・・。ここで、ジュリアスの視界は閉じられる・・・・。           「・・・・・・?」            クラヴィスは誰かに呼ばれた様な気がして振り返る           「どうかなさいましたか?クラヴィス様・・・」           「いや・・・何でもない」            クラヴィスは気のせいかとオスカーに視線を戻す。ルヴァは先程から扉の方でエル           ンスト何やら話している・・・。           「オスカー様、どうなさったんだろう・・・昨日はお元気だったのに・・・・」            ランディが心配そうにオスカーの顔を覗き込んだ・・・。           「ちょっと、オスカー・・・。大丈夫なの?」            寝ているオスカーに聞こえるはずが無いのだがオリヴィエがオスカーに呼びかける           するとピクリとオスカーの瞳が震えたかと思うとゆっくりとオスカーの瞳が開かれる                       それは、最終章の幕開けだった・・・・・。                      
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