麝香連理草
- scar U-
「・・・ジュリアス、先程はああ仰いましたがもう限界です。この惑星を消滅させなけれ
ば周りに影響が及びます。今が決断の時です・・・」
「分かった・・・私が行こう・・・」
「行こう?行こうとはどう言うことですか?」
「この惑星は内から閉めなければならない・・・。炸裂させればその破片にまで及んだ悪
しきものが近隣の惑星に影響を及ぼすからだ・・・。ルヴァ、そなたには言っていなか
ったが・・・・」
「何故、その様な大切なことを言ってくれなかったのですかっ!」
ルヴァでもこの様に怒るのだと不思議にも静かに思っていた。
「ジュリアスッ何をそんなに落ち着いているのですか!惑星を内から閉めると言うこ
とは・・・・」
・・・そう、惑星を内から閉めると言うことはその惑星共に消滅すると言う事・・・。
「分かっている・・・ルヴァ。私のサクリアは陛下と近しいものだ・・・だから、私が居な
くなろうとも陛下がお力を貸して下さる・・・。」
「ジュリアス、先程のクラヴィスとの事で自暴自棄になっているのではないですか?」
「くすっ、それは違うルヴァ・・・私がこの惑星が危険だと言われていた時から考えてい
たことだ・・・・」
「・・・・ジュリアス。何故、笑うのですか?御自分の死が分かっているのに・・・」
「さぁ?何故だろうな・・・・」
・・・・ジュリアス、貴方が透明すぎて見えません。朝の霧に覆われたものではなく、
今の貴方は何も感情が無くて・・・透明すぎて見えません・・・ジュリアス・・・・。何故、貴
方は独り茨の道を進むのですか?茨の道を「茨」と思っていない貴方はその道を進む
のでしょう・・・・ジュリアス。
「ルヴァ・・・どうしたのだ?」
「いえ、もうダメですか?私がどれほど貴方を説得しても・・・」
「・・・・すまない。」
ジュリアスはルヴァに近づくとそっと手を握った・・・。
「ルヴァ・・・今迄ありがとう・・・。」
「いえ・・・私の方こそ・・・・」
「クラヴィスの事を・・・・いや、もう私が言うべきではないな・・・・」
そう言うと儚げな微笑みを浮かべました。何故でしょう、今の貴方のその微笑みが
美しいと思ってしまうのは・・・。悲しい・・・微笑みを美しいと思ってしまうのは何故で
しょう・・・・。
「・・・ルヴァ、最後に1つだけする事がある。明日次元回路を開いてはくれぬか?」
「えぇ、わかりました・・・。」
「では・・・な。」
貴方は扉の向こうに消えていきました・・・。白くも美しい金色に輝くその姿は(流石
光の守護聖)と褒め称えられた孤高なる姿。どんな時でも貴方は辛い道を歩んでいく
・・・それを辛いとは思っていない悲しさ。幼少から教え込まれた忠誠心で己の生など
考えていないジュリアスを私は愛おしいと感じました・・・。家族のような愛で貴方を包
みたいと思いました・・・。
それはクラヴィスとの事があった後、皆が居なくなった会議室でルヴァとジュリア
スがした会話だった・・・。
聖地の夜も更け誰も居なくなった庭園にジュリアスの姿があった・・・。1つ1つを確
かめるように聖地にある者全てを愛おしそうに見ている・・・。
「最後だな・・・。この風景も・・・・」
そして、もう寝てしまっているだろう守護聖の館を1つ1つ回って行く・・・。
「私が居なくなることを知ったならば皆はどう反応するかな・・・ふふっ、五月蝿い者
が居なくなって清々するか・・・・」
最後に残された闇の守護聖の館にと向かう・・・。最後にすべき事・・・それは・・・遙か昔
に埋めた将来への願い・・・私とルヴァそしてクラヴィスとで埋めたこの箱の中の私の
願いを書いた紙を取りに来た・・・。誰も覚えていないかも知れないが、万が一誰かが思
いだした時に人の目に触れないように・・・。
クラヴィスの館に付いた時、風の流れが変わったのかクラヴィスの館の中からハー
プの音色が聞こえてきた・・・。それはとても優しく心を包む音色だった・・・。その音色を
聞きながらジュリアスは木の根本にある箱を掘り続けた・・・。手が土で汚れる・・・服が
顔が・・・・心が・・・・。
雨が降っているのか・・・水が手に落ちてくる・・・ぽたぽたと、夜空を見上げればそれ
は星が煌めく素晴らしい夜空で・・・。その時始めて自分が泣いているのだと気が付いた
・・・。
(何をやっているのだ・・・・あの者は・・・)
クラヴィスはリュミエールの音色を聞きながら窓辺に立つと、木下で何かをしてい
るジュリアスを見付けた・・・。その木が何を意味するのかクラヴィスは忘却の彼方であ
る。ただ、月の光がジュリアスの金糸を輝かせて眩いほどの光を放っている・・・。顔は
髪で隠れていて見えない・・・。
「クラヴィス様、どうかジュリアス様との仲互いを解消して下さいませ・・・。あのクラ
ヴィス様のお言葉は本心では無いはず・・・。クラヴィス様の愛するお方はジュリアス
様ただ1人でございましょう。どうか・・・・お願いいたします。」
「あぁ、その通りだ・・・。リュミエール私の愛する者はジュリアスただ1人だ・・・。私の
今迄の心内に溜めてきた黒き物をジュリアスに関係ないのにジュリアスにぶつけて
しまった・・・。ジュリアスは私を甘えさせてくれるから・・・。でも、言い過ぎた私も
反省している・・・。」
「では、今すぐにでも・・・・。」
「いや、夜も更けている・・・・明日・・・明日になったら・・・」
クラヴィスは窓辺に立ったまま、ジュリアスを見続けていた・・・。その内にジュリア
スはその何かを終えてその場を去っていってしまった・・・。ジュリアスが去ってしまっ
た後でもクラヴィスはその場から動こうとはしなかった・・・。
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