貴方の声が聞こえない・・・・。
−中編−
私は幼い頃ずっと思っていた。朝目が覚めたら耳が聞こえる様になっていて・・・
そんなお伽噺のような事をずっと、ずっと信じていた。幼い頃だけではない、今もずっと
思っている目が覚めたら、おはようと言える事をずっと信じていた。
・・・・・・信じていた。
信じていたけれど・・・・・
そんな夢物語は起こるはずもなかった。
私の耳はこの世に生まれ出た時から永遠に聞こえる事は無いだろうと言われた物だ。
現実は厳しくてささやかな夢でさえも打ち砕く。
クラヴィスは何故、私にこんなにも良くしてくれるのだろう・・・。同情?哀れみ?義務感?
前にも不思議に思って直接聞いたことがあった。そうするとクラヴィスは烈火の如く怒った。
「私とお前は友達だっ!だから一緒にいる。」
その言葉が何よりも嬉しかった。
・・・・・でも今、私はもう一度クラヴィスに同じことを聞きたい。『何故、私と共に居てくれる
のか』でも、もう聞けない。クラヴィスの存在が自分の中で大きくなりすぎて答えを聞くの
が恐い。人の想いは変わるから・・・もし、前と違う言葉がクラヴィスから返ってきたら・・・。
私は
私は・・・・もう他の誰かにだなんて笑えない気がする。
いっそのこと、離れてしまえば良いのだろうか?こんな普通でない感情を持つ私は・・・・
「トモダチダ」
ではなく
「アイシテイルカラ」
と言って欲しいこんな感情を持つ私。クラヴィスにとっては迷惑な事だろう・・・そして、
今が・・・・今の時がチャンスだと思う。私は生家に戻ってくるように言われている。今迄放って
置いた人達が今になって何故と言う気もするが・・・・この邸の者でも私以外は誰も知らない。
勿論クラヴィスでさえも知らない・・・・。もと居る場所に戻った方が良いのだと思う。
クラヴィスを自由に
羽ばたく鳥のようにするためには
私は側に居ない方が良いのだと思う
部屋から見上げる蒼い空は突き抜けるように蒼く高く雲1つない綺麗な空。太陽の光がク
ラヴィスから貰った硝子の球体が輝き部屋の中をも青く照らす。物音1つしない空っぽの私
の心は深い深い海の底に居るようだった・・・・。
・・・・・・・・クラヴィス。
そなたを自由にしてやらねば・・・・・・・
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