その時優しい風が吹いた・・・・
Wattle
涼やかな音色が湖面に響く・・・・。どこか懐かしく・・・そしてどこか寂しい音色は
聞く人の心を穏やかにさせた。
カサッ・・・・・・・
「誰ですか・・・・?」
静かな心休む一時を無粋な音が邪魔をした。
「どなたかいらっしゃるのなら出てきて下さい・・・」
すると茂みから、高貴なる光を携えた光の守護聖が姿を現した。
「・・すまない。リュミエール、そなたの時間を邪魔してしまった・・・。」
「その様なことはありません。ジュリアス様」
「私もここで休もうと思っていたらそなたのハープの音色が聞こえてきたのだ・・・。
そなたが気持ちよさそうに奏でていたから、邪魔をしてはならぬと直ぐ帰ろうと
したのだが・・・・あまりにも綺麗な曲で・・・・その・・・」
ジュリアス様はそう仰ると頬を少し赤らめて俯いてしまわれました。なんとも、
美しい方なのでしょう。頬を染めて俯く姿などなんと愛らしいことでしょう・・・。
「お気になさらないで下さいジュリアス様。ジュリアス様に気に入っていただけたな
ら私も嬉しく思います・・・。どうですか?ここにお座りになってもう1曲でも・・・」
「・・・・いいのか?」
ジュリアス様は私が曲を邪魔されたことを怒っているのかとまだ気にされているよ
うですが・・・・ふふっ、そんなことはありません。逆にジュリアス様が来て下さって嬉
しいくらいです。最近ではクラヴィス様が邪魔をしてジュリアス様になかなか会えな
いのですから・・・こういうところでクラヴィス様に秘密で会うのはなんと甘美なことで
しょう・・・・ジュリアス様、私の心は貴方に完全に囚われてしまったようです・・・。
「えぇ、私も聞いて下さる方がいて下さる方が嬉しいです。」
「そうか・・・」
どこかほっとした顔をしてリュミエールの傍らに腰を下ろす。するとフワリとリュミ
エールから優雅で優しい香りがした・・・・。
「良い香りがする・・・・リュミエール」
「そうですか?」
「あぁ、優雅で優しい・・・遠い記憶の中にある母上の様な香りがする・・・・」
ジュリアスはリュミエールの胸のあたりに顔を近づけて香りを楽しんでいる・・・・リュミ
エールはジュリアスの金糸の髪が直ぐ顔の前にありドキドキしてしまう。リュミエールの
心を弄ぶかのように穏やかな風が吹き金糸が顔を撫でる。
「あっすまぬ。気を悪くしただろう・・・」
ジュリアスは顔を胸から離し、リュミエールに謝る。
「いいえ、嬉しいですよジュリアス様。ジュリアス様の大切な方と同じ香りがするなんて・・」
「・・・・そうか、良かった。」
「それでは始めましょうか・・・」
「あぁ・・・・頼む」
涼やかなハープの音色は暖かな音色を奏でていた・・・静かでそれでいて暖かく・・・その音色は
湖面に反射してキラキラと輝いているようだった。春も近しい陽差しが緑の重なる葉から漏れ
二人を照らした・・・。
「・・・・・コトッ」
不意に肩に何かが触れた。
「・・・・ジュリアス様。」
見ればジュリアスが寄りかかっている。紺碧の瞳は閉じられて桜色の唇からは可愛らしい寝
息が漏れている。リュミエールは音を段々と落としジュリアスが起きないように細心の注意を
払ってハープを傍らに置き、ジュリアスの頭を膝の上に置いた・・・。ジュリアスの顔を照らす
光を眠りを妨げないようにリュミエールは掌で庇いながらその一時を楽しんでいた。
この人が目を覚ましたら最初にどんな言葉を掛けようか・・・
と1人嬉しそうにその時を待ちながら・・・・
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Wattle(ワットル)この題は花の名前でアカシアの
英名がWattleと言うのです。花言葉は「プラトニッ
クな愛」・黄色のアカシアは「秘密の恋」です。