天使のあくび 20
ジュリアスが居なくなった・・・。
この知らせを聞いた時、俺は正直言って頭を“ガンッ”とぶっ叩かれた感じ
がした。あのお偉いジュリアスがちっけー身体になった時も充分に驚いたがそ
れ以上の衝撃が走った。あんな弱っちくて小さっい身体で一体どこにいっちま
ったんだ・・・・。
ゼフェルは【迷子防止メカ】が駄目になってしまった今、エアーバイクに乗
ってでジュリアスを探していた。そしてライダースーツの胸元にはジュリアス
の為に作った小さめのロボットがある。それは小さなジュリアスがゼフェルの
邸に遊びに来たときの事だった・・・・・。
その日もクラヴィスの仕事が忙しくジュリアスに構ってやれないと言う事で
たまたまクラヴィスの目の前を通ったゼフェルがジュリアスのおもり役として
抜てきされたのだった・・・。渋々ながらもトテトテと歩くジュリアスに業を煮
やし肩車をしながら自分の邸へと向かった・・・
「イラッシャイマセ・・・・・」
邸の扉を開けると迎えのロボットが出てきた。
「あー。お前は何時になったら覚えんだよ!俺が帰ってきたときは“オカエ
リナサイマセ”だろーが!」
「アァ、スンマセン。ゼフェルサマ・・・」
ゼフェルはこのロボットを作ってからこの会話をずっと続けている・・・
「ねぇねぇ、ゼフェルさま。なぁーに?これ・・・・」
肩車しているジュリアスが興奮してゼフェルの髪の毛を引っ張って聞い
てくる。
「イテテテテ・・・・・。ジュリアス、いてーよ!今説明してやるから髪離せ」
「ご、ごめんなさい」
しゅんっと言葉に力の無くなったジュリアスを肩から降ろしてやり“気
にすんなよ”と頭をさすってやると嬉しそうにニコーッと微笑んだ。
「これはロボットって言って俺が作ったんだぜ。」
「ロボットさんっていうの?よろしくね。ロボットさん、ぼくジュリアス」
ジュリアスはロボットの手を握り握手をする。
「おいおい、ジュリアス。そいつの名前は“ロボット”じゃないんだぜ」
「・・・・?お名前がロボットさんじゃないの?」
「馬鹿かおめーは・・・。ロボットって言う器械なの!名前もなんにも無い
んだよ!」
ジュリアスを迎えたゼフェルの邸の入口では2人を迎えたロボットと
使用人がどうしたものかと2人を見守っていた。
「なんで?なんでおなまえがないの?」
「なんで?ってそりゃー器械だから・・・・」
「きかいだとおまなえつけてくれないの?おはなしできるのに・・・かわい
そうだよゼフェルさま・・・・」
きゅーっと目の前のロボットに抱きつきゼフェルを見上げるジュリアス
の瞳にはうっすらと涙が浮かんでいる・・・。
「あーっ!もう、うざってぇーなぁ。じゃぁどうすれば良いんだよ!」
「おなまえつけてあげて・・・・。」
「んなこと急に言われても・・・」
「じゃぁ、ぼくがつける・・・【ゼル】ね・・・ロボットさん」
「はぁ!?なに格好悪い名前つけてんだよ!」
ジュリアスがつけた名前に回りの使用人達からクスクスと笑いが零れる
「もう少し考えてからつけろよ」
「いーの、ゼフェルさまがつくったからゼルなの!ねー、ゼル。よろしく
ね。」
あくしゅ、あくしゅ。と小さい手を一生懸命伸ばして【ゼル】と握手を
するジュリアスにゼフェルは頭を『ピシッ』と指で弾いた。
「いたい」
「ほら、何時までもこんなとこいねーで早く部屋に行くぞ。」
「うん。でも、ゼフェルさまやくそくね。」
「なんだよ」
「ゼフェルさまがつくったロボットさんにはちゃんとおなまえをつける
の。ゼフェルさまがおとうさんなんだからね」
えっへん!と胸を張るジュリアスにげんなりと肩を落とすゼフェル。
「なんで、そんな面倒なことしなきゃなんねーんだよ」
「だって、ゼフェルさまがつくるんでしょ!」
・・・・・だから、責任を持ちなさいってことか。とゼフェルは思う。自分の
することには責任を持ち、作りだした物に愛情を注いでやると言う事をこ
の幼いジュリアスは言いたいのだろう。
「・・・・・やっぱりジュリアスはジュリアスだな」
ぼそっと言った言葉は誰にも聞こえなかったが
「じゃぁ、ゼフェルさま。ゆびきりげんまんね」
と皆が見ている目の前で指切りをやらされたことを思い出すとゼフェル
は顔が熱くなった。そしてその後にジュリアスに約束をしたのだ。
『ぼくもおともだちがいっぱいほしい』
と言ったジュリアスに・・・・ロボットを作ってやると。
アイツが持っても重くない様に
アイツが何時も持てる様に
アイツの側に居れる様に
小さなロボットを作ってやって、名前までもうついているのにアイツは
ドコで何やってんだ!!
ゼフェルは必死になって探しまくった。
こんなに前のことが鮮明に思い出すなんてあんまりにも縁起が悪いじゃ
ねーか!こんな逝っちまったヤツのことを思い出すような・・・
その考えにゼフェルの身は震え上がり胸の中のロボットを握りしめた。
早く、ジュリアスに会わせてやるからな・・・・
シルバーメタリックのエアーバイクは夕陽を反射してオレンジ色に輝
いていた・・・・・。
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