しゃぼん玉。
煌らかな晴天の下、
そよ吹く微風に 身を委ねながら
緑したたる並木は 広げた枝を 大気の中に休めている・・・。
肌を擽る微風の心地よさはまるで・・・
あの者の腕の中に居るようだった
緑の葉群のそよぐ中に僅かに煌めくあの光のなんと美しい事だろう
何処かの子供が恐らく吹いたであろうしゃぼん玉の光は
その中に夏の気配を閉じこめて飛んでいく・・・
「しゃぼん玉、とんだ・・・・屋根までとんだ・・・・屋根までとんでこわれて消えた・・・・」
不意にそのしゃぼん玉を見ながら幼い頃に唯一母上から教わった歌を思い出した。あれは
何時の事だったか全く覚えていないが、庭の中を手を繋ぎ歩いている時に母上が呟く様に
歌っていたのを思い出した。その時の母上の表情は太陽の光の逆光で良く見えなかった気が
する。
しゃぼん玉とんだ
屋根までとんだ
屋根までとんで
こわれて消えた
しゃぼん玉きえた
とばすにきえた
生まれてすぐに
こわれてきえた
風、風吹くな、
しゃぼん玉とばそう
窓を開けそんなしゃぼん玉を見ながら耽っていると直ぐ後ろで衣擦れの音がした。
「随分と悲しい歌を歌っているんだな・・・・」
「悲しい歌?この童謡が悲しい歌だというのか?」
「あぁ・・・この歌は、子を亡くした親の心を歌った歌なのだ・・・。」
「子を亡くした・・・!?」
母上があの時歌っていた歌はそんなにも悲しい歌だったのか・・・。思えばあの時の私は
既に聖地に来ることが決まっていた。
・・・・下界と聖地とでは世界が違いすぎると感じても仕方がないのだ。そう母上にして
みれば私はもう会えない神の国へと行くのと同じだったのだろう・・・・。死んだも当然の子
供か・・・・
ジュリアスは沈んで行く心を止められずにいた・・・・。
「こら、ジュリアス。お前はまた深く考えすぎているな・・・」
ふーと溜息を付くとクラヴィスはジュリアスの腰に両腕を回し背後から優しく抱きしめる。
「この歌は子を亡くした親の悲しい気持ちを歌っただけではない・・・。「風、風吹くな、
しゃぼん玉とばそ」といのちを存続させるためへの深い祈りを捧げるものでもあるの
だ。だからお前の母はお前に歌った歌ではなく自分に対しても歌った歌なのであろう
自分の命は恐らくお前が戻ってくるまでにはもたないだろう・・。人が代わり家が変わ
るかも知れないだが忘れないで欲しい・・・自分が母であった事を・・・お前が帰ってきた
ときに例え自分が居なかろうが自分は必ず輪廻の輪の中に戻りまたジュリアス・・お前
のと共に生きようと言う事をこの歌に込めて歌ったのではないか?」
「・・・・クラヴィス。」
「まぁ、今の言葉の中には私の想いも充分すぎる程入っているがな・・・・」
クスッと笑うとジュリアスの金糸の髪の中に鼻先を埋める・・・。
「その言葉に二言は無いだろうなクラヴィス?」
「フッ、あぁ勿論だ」
頬を擦り寄せながら2人は窓の外のしゃぼん玉を見つめる。キラキラと輝き煌めき、そ
れは生命の輝きのように光を放っている・・・。
風、風吹くな
しゃぼん玉 とばそう
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久し振りだわ!クラジュリ書いたの!!
何だか話は浮かべど、断片的で書けない
日々が続いていたのです。
何とか今回は1つの作品として産めま
した(笑)