【帰り道】
がたん・・・・・・・・がたん・・・・・・・・がたん・・・・・・・・
「俺ってねー電車乗るのが好きなんよ」
子供の様に笑ってペコは言った。
「・・・・・・・・・・なんで?」
僕の問いにペコは「ふわぁー」っと両手を組んで大きく背
伸びをした。電車の窓からは午後の暖かい光がペコのサラサ
ラのおかっぱを照らしていた。
「電車って言ってもなんでも好きな訳じゃないんだわ。この
江ノ電が好きなの。だって今だに木造の床とかあるし・・・天
上の扇風機とか・・・・好きなんよ」
「あぁ・・・それは分かる気がする。無機質な冷たい感じかする
普通の電車と違うもんね【江ノ電】って・・・・」
「やっぱスマイルだ。」
「・・・・・・・?なにが?」
「スマイルだったら、分かってくれると思ってたんさ」
僕の肩に手を回してぎゅぅーっと抱きしめた。
「ちょっとペコ。離して・・・・何処だと思ってるの・・・・」
今は電車の中で、今日は高校が午前中だけだから他の七里ヶ
浜高校とか鎌倉高校とか乗ってないけど・・・・少ないとはいえ同
じ片瀬高校の生徒は乗ってるのに・・・・・
「んー、電車のなかぁー」
「だから、引っ付くの止めてよ・・・・」
「いいじゃん!この車両他に乗ってる人達寝てんしさ」
回りを見回して見れば他の生徒はこの良い陽差しにつられて
寝てしまっている・・・。
「でも、次の駅で誰か乗ってくるかもしれないだろ・・・・」
「んーっ。スマイルってばうるさい!うるさい口はこうナリ!」
・・・・・・ちゅっv
「ばばばば、ばかっ。何するんだ」
どんっ!とペコの胸を押して身体を離した。ペコは電車のシ
ートにひっくり返っていた。
「いってーな。スマイル」
「ペコが常識がないことするから・・・・誰かに見られたらどうす
るの」
「別に見られてもいいもーん」
「馬鹿」
僕たちの他に誰も座っていないシートの上に寝っ転がりペコ
は頬杖をついて見上げてきた
「スマイル・・・・・・」
「ん?」
「ちゅぅしてくれろvちゅぅ」
「するわけ無いだろ。」
「ちゅぅ〜」
唇を「んー」と突きだしている
「しない。」
僕はペコの手を伸ばしおでこを弾こうとすると今迄眼を瞑っ
ていたペコの眼が開き「ぐっ!!」っと手を掴まれた。
「なっ、なに!?」
「ちゅぅ〜」
「・・・んっ!!」
ペコは僕の手の甲にキスをした。
「ちょっと離してよ!ペコ」
「ちゅぅーっ」
離そうと藻掻けば藻掻くほどペコは手の甲に吸い付いてくる。
「ペコッ!」
半分涙目で僕はペコを呼ぶ。
「ちぇー。恥ずかしがり屋さんなんさ。スマイル」
「うるさい。」
かぁああっと顔が熱くなるのを感じる
「続きは家でねん」
赤くペコの跡が付いた手の甲をさすりながらペコを見ると気
持ちよさそうに寝てしまっていた。
「まったく・・・・・しょうがないヒーローなんだからさ・・・・」
ペコの寝顔を見ているのも良かったけれど顔が今以上に熱く
なって来てしまうので僕はカバンの中にある読みかけの小説を
開いた。
電車の窓からは心地良い秋の風が湘南の海の香を乗せて僕の
髪とペコの髪を弄んでいた・・・・。
・・・・・・・・・・おやすみ。ヒーロー
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