恥じらい
・・・最近、クラヴィスの様子がおかしい、私の姿を見てはスッと身を隠し物陰からじーっっと見ているのだ・・
「なんだ?用でもあるのかクラヴィス」
と声を掛ければ、スススッと何処へなりと去っていってしまう。正直言って気持ち悪い!何なのだ、用事があれば言
えばいいものを・・それを恨めしげに私を見てはスススッと消えていく・・。まったく何なのだあの者はっ!この様な
態度が昨日今日なら、まだ私も我慢できたがそれが、3週間っっっ!!3週間も続いているのだ!!放っておけばやがて飽
きるだろうと高をくくっていたがどうやら収まりそうもない・・・。私の精神のとうとう際までキテしまっている。今
日こそはあやつに言わればならぬ!・・・とジュリアスは聖殿の廊下を足にまとわりつく長衣をさばきながら颯爽と歩
ていた。
・・・一方、クラヴィスはと言うとジュリアスにあることを言おうとそのチャンスをうかがっている最中であった。
(何時言おう・・と様子を見ているうちにジュリアスに気づかれ不審がられるようになってしまった。・・どうしよう)
どうしよう、こうしようもない、思い切って言ってしまえば良いではないかと思うが何故クラヴィスは余りと言うか、
全然自分の気持ちを言うということが大の苦手で今さらながらその性格を直すのは遅すぎたらしい・・・。だから、何
時も言いたいことは喉の所まで出ているのだがその言葉を喉の奥で出したり引っ込めたりと繰り返しているうちにジュ
リアスの逆鱗に触れてしまうクラヴィスであった。
(たった、一言・・・・好きって言いたいだけなのに・・・)
とクラヴィスは頭の回りにフヨフヨと浮かぶ人魂をつれてとある「花」を持ちながら廊下をブツブツ言いながら、ル
ヴァよりも遅い歩きで聖殿の廊下を歩いていた・・。
カツカツと言ったぐわいに歩いていたジュリアスは前方に止まっているクラヴィスを発見した。クラヴィスは本当は
止まってはいないのだがジュリアスにはそう見えるのである。
「ふむ、今日はあやつめ物陰に隠れぬではないか。もう止めたのだろうか・・」
ジュリアスはクラヴィスに近づいてポンッと肩に手を乗せる・・・
「クラヴィス?どうし・・・・」
ズサァァァァァァァ ──────────────────────
肩に手を掛けただけなのにクラヴィスは数メートルも一気に後ろの方に下がってしまった・・・。お互い驚いて声も出
ないでボーっとしている。だが、ジュリアスの方が早く正気に戻り、(・・クラヴィス)と言おうと唇を動かそうと思っ
たら、クラヴィスが動いた。スススッと近くの柱に身を隠し顔を少しだけ出してこちらを見ている。
ムカムカムカァァ─── ッ!!この行動でジュリアスは完全にプッツン来てしまった。
ジュリアスの怒号が廊下に響く・・・
「一体、何なんだっお前は!!言いたいことがあるならハッキリ言え!!ハッキリッッ!!」
「・・・・」
ジュリアスの怒号はそれぞれの守護聖の執務室まで聞こえたらしく、ぞろぞろと守護聖達が何事かとジュリアス達の近く
に集まってきた・・。
「どうしたのさ、ジュリアス」
オリヴィエがジュリアスの傍らに寄って聞いた
「この者が最近、不可解な行動を私に取るから言いたいことがあるのならハッキリ言えと言ったのだっ!!」
そうジュリアスが言い切るとそこに居た守護聖達は「あぁぁ・・」と呟いた。その言葉で分かるように確かに皆、クラヴ
ィスの様子がおかしいと思っていたのだ。だが、皆
『貴方から聞いてください!』
『なんで俺がお前の方があの人に近いじゃないか!』
『あんたから聞いてみてよ!長い付き合いでしょ?』
『なっ、長いと言いましても、私よりジュリアスの方が長いですよ・・』
『オメーが聞いて見ろよ!ハッキリしないと気持ちわるいぜ!!』
『なんで俺がっ!!お前が聞いてみればいいだろう!』
『なんだとっ!!』
『もぅ、二人とも止めてよぅ』
と言い合いをして数日がたちついに本命のジュリアスの雷が落ちたのだった・・。
「・・クラヴィス様。どうなさったのですか?何か仰りたい事でもお有りなのですか?」
リュミエールがクラヴィスを心配そうに見上げながら言う。
「クラヴィス、気持ちは言葉に出さなければ分かりませんよ・・・」
ルヴァがリュミエールの横で微笑みながら言った。
「そうよ、クラヴィス!言いたいことがあるならハッキリ言っちゃえば?最近のアンタ本当に変よ。ジュリアスを見ればス
イーッて物陰に隠れちゃって・・アンタ着てる服が真っ黒だから、まるでゴキ・・ブッ!?」
「オリヴィエッ!!」
オスカーが青ざめてオリヴィエの口を塞いだ。溜め息と共にジュリアスがクラヴィスに話しかける・・。
「・・・クラヴィス。言いたいことがあるのなら、言って欲しい・・」
先程の怒号もどこえやら、ジュリアスの声は幼子に問うような優しさだった。その変化に他の守護聖達も驚き、始めにジ
ュリアスを見て次にクラヴィスを見た。どうするのだろうと皆の視線がクラヴィスに集まる。
(どっ、どうしよう・・・)
クラヴィスは頭の中がグルグル・・。皆の目が・・・皆の目が・・・でも、ジュリアスのあんな優しい声は初めて聞いた。
クラヴィスは手の中にある「花」をギュウッと握りしめると、ジュリアスの方にスリスリと歩いていく・・。皆の目がクラヴ
ィスの動きに合わせて動いていく。そして、クラヴィスはジュリアスの目の前で立ち止まった。
「・・・ジュリアス」
「なんだ?」
クラヴィスはジュリアスの顔を見て想いを告げようと、顔を上げるとそこには今迄に見たことが無いくらいの微笑みを浮か
べているジュリアスがいた。その顔を見たとたんクラヴィスはカァァァァ−−ッと頭に血が上ってしまい、想いを伝えるどこ
ろでは無くなってしまった。
「・・クラヴィス?どうしたのだ?」
「・・・・」
「クラヴィス?」
クラヴィスは手に握っている「花」をジュリアスに突き出す。
「なんだ?この花は、私にくれるのか?」
コクッとクラヴィスが頷く。
「そうか、ありがとう」
ジュリアスが花を手にするのを見るとクラヴィスはそう、効果音を付けるとしたらキャ−−−ッといったぐわいで自分の
執務室に入っていってしまった・・・。残されたのは、ジュリアスとその他の守護聖達、なにを貰ったのかと皆がジュリア
スの周りに集まってくる。
「何貰ったのさ、ジュリアス。なにコレ、花?」
「ホントだ花だ!」
「この花は・・・」
「やはり、そう思われますか?」
「何だよ!この萎れた花は!」
「何だったんだ、あの人は・・・」
「何ですか?お花?ボクにも見せて下さいぃ〜」
一番背の低いマルセルが花の前に立つ。
「わぁ〜、可愛いですね!でもこの花言葉は・・・」
マルセルがそこまで言って口を噤む。
「なんだ?この花言葉は・・」
ジュリアスが興味津々に聞いてきた・・。
「あのっ、その・・・」
しどろもどろになってしまう。
「言ってみよ、マルセル・・」
「そうよ、私聞きたいなぁ〜。マルセルちゃん」
「ボクにも聞かせてよマルセル!」
「俺にも言えよ!」
「マルセル、何なんだ?この花の花言葉は・・・」
皆がマルセルに詰め寄る中、ルヴァとリュミエールは何故だかヒソヒソと話している。
「それは・・・」
「「「「「 それはっ?」」」」」
「『好き』です」
「「「「「 まさかっっ!! 」」」」」
その時、ルヴァとリュミエールの深い溜め息が聖地に染み渡った・・・。
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