恥じらい 7
「何だかさぁ〜。クラヴィスの為に色々考えてあげてるけど結局はクラヴィス次
第だって思わない?オスカー・・・」
夢の守護聖・オリヴィエはカランッと氷を鳴らしてアイスコーヒーを飲んだ。
「それは、そうだがオリヴィエ。お前はクラヴィス様の力になると言ったんだろ?」
「だけどさぁ〜、クラヴィスがあんなんじゃ私達が努力しても無理っぽくナイ?」
オリヴィエはストローでグラスの中の氷をかき回した。
(最もらしいことを言っているがオリヴィエ!俺は知っているぞ!お前は飽きたん
だ!一向に前進しないこの事態にお前は飽きたんだろうが!)
オスカーは心の中で叫んだ。
「何か言ったっ!オスカー!!」
「おいおい、何にも言ってないぞ俺は・・・」
「何だか心の声が聞こえたような気がしたんだよ!」
「そうか?そう言う声って心にやましいところがあるから聞こえるって言うんだぜ」
「何だってぇぇぇ〜!」
これから一色触発かと言うとき・・・
「「・・・・暑いから止めた。」」
2人は声を揃えて椅子に座り込んだ。そう、それほどまでに暑いのだ今期は、溶け
るような暑さとはまさにこの事だろうと言うくらいに暑い!人間でもアイスのよう
に溶けてしまいそうだ・・・。
「全くさぁ〜、四季がないと寂しいからってこんなクソ暑くしなくても良いじゃない
のよぉー。」
「まったくだぜ、おじょ・・・いや、陛下の考えることは計りしれん。」
「ねぇ〜?」
「なんだぁ?」
「クラヴィスの部屋に行かない?」
「どうしてまた・・・」
「う〜ん、暑いからクラヴィスの部屋に行って”きもだめし”気分を味わう」
「いくら、クラヴィス様の部屋が暗いからと言って・・・」
”きもだめし”はないんじゃないのかと思う。確かにあの薄暗い部屋にクラヴィ
スがずぉーんと居たらそれは恐ろしいだろうが・・・・。
「決まりぃ〜、ほら行くよ!」
「おっ、おい待てよ!」
オリヴィエに引きずられるようにオスカーは連行された(笑)
・・・・・・・それから数分後。
「暑いーーーーーっっ!」
オリヴィエの絶叫がクラヴィスの部屋に炸裂する。
涼を求めてきたはずが余計に暑くなったのだ。それは夏だと言うのに何時もと変
わらないクラヴィスの装いである。暑さを吸収する黒い長衣をズルズル。キューティ
クルのきちんとしたサラサラのながぁ〜い髪をバサバサ。見ているだけでも気温が
5℃ほど上がってしまう。
「どうにかしなさいよ!その格好っ」
「(“どうにかしなさいよ”って言われても・・・・だって黒い服で居るといっぱい光
を吸収出来るし・・・光=ジュリアスだし・・・。)」
口元に手を当てて悩んでいるように見えるクラヴィスにオリヴィエもキレるそれ
ほどまでに不快指数が高いのだ。
「分かったわっ!どうにかしないんなら、私がどうにかしてやるわよ!」
オリヴィエはクラヴィスの衣装をはがそうと向かってくる、般若の様な形相にビ
ビッたクラヴィスは走り出す。蛇足=般若のお面は怒る女性の顔をモチーフに作られたそうだ
「脱ぎなさいよ!」
「(いやーーーー)」
きゃーきゃーと言って追いかけっこを始めた2人をオスカーはクーラーの噴射口
の前で涼みながら“また始まった”とばかりに溜息を付いた。
「おい、もう止めとけって・・・」
オスカーが言おうとした時。
・・・・・・・むんずっ
オリヴィエの手がクラヴィスの長衣の裾を捕らえた。手に掴んだ布を思いっきり
引っ張りクラヴィスをビタンっと床に引き倒した。
「やりー!捕まえたわよ!クラヴィス!」
馬乗りになりオリヴィエは勝利を噛み締める。下に引かれているクラヴィスはし
たばたと何やら動いている。まるでひっくり返ったカブトムシのようだ・・・
「今の時期に黒なんて身体に悪いわよ!だから、アンタには夏らしい黄色とかオレ
ンジとか着させてやるわよ!」
「(ビクッ、お、おれんじ?黄色?・・・・黄色はちょっと良いかも(///)でもそんな
色の服着るのはいやだーーーー)」
クラヴィスはぎゅっと瞳を閉じるとぽたぽたと泣き出した。それを見たオスカー
が・・・・
「あーあ、オリヴィエ〜」
「あーもう、泣かなくても良いじゃない!冗談だよ!冗談!ねっ、クラヴィス泣か
ないでよぅ」
「(・・・・・ぐずっ)」
よしよしとクラヴィスの頭を撫でてやる。だがクラヴィスの髪が指に絡まる。
「クラヴィス、服は勘弁してあげるから髪は縛った方が良いよ。鬱陶しいし」
「(・・・・鬱陶しい、確かにそうカモ。ジュリアスのハンカチにスリスリする時に邪
魔なんだ)」
クラヴィスがこくんっと頷くのをオリヴィエは喜び今迄何処にしまっていたのや
らポーチを取り出してブラシを取り出した。それでもブラシなど必要がないようだ。
クラヴィスの髪はすーすーとブラシを通してしまう。
「いいねぇー。あんたの髪は、サラサラでさぁ〜私もストパー(ストレートパーマ)
かけようなかぁ・・・」
オリヴィエはブツブツと呟きながらクラヴィスの髪を縛った。
・・・・・・きゅっ。
「あ〜ん☆出来たぁ〜vv見てよオスカー」
クーラーの噴射口で1人マントの両端を掴んで風を受け止めていたオスカーはく
るりと振り返り・・・そして・・・・
「げぁっ!」
吹き出した。
「何なんだオリヴィエ、その髪型は!」
「え〜良いじゃん一本に結ぶのも何だか芸がないし・・・・この方が良いんじゃない?」
「良いんじゃない?て言ってもだな・・・・」
(この髪型はありえない)とオスカーは思う・・・。クラヴィスの髪型。それはレトロ
な感じ漂わせる“おさげ”だ“おさげ”がわかならいお人もいるだろう・・・三つ編み
のことだ。センターで分けた髪を2つに三つ編みしているのだ。・・・昭和初期(x_x)
「どう?クラヴィス、すっきりしたでしょ?」
「(こくんっ)」
「ほらぁー、クラヴィスが良いって言っているんだから良いじゃない☆」
「そうか・・・・」
それっきりオスカーも何も言えなくなってしまった。本人が良いと言っているんだ
から何も言う事は無い。・・・・と言うか出来ない(笑)
・・・・・コンコン。
慎ましやかなノックの音がした。
「誰か来たみたいだよ!クラヴィス」
だけどモジモジと自分のおさげを握りしめるクラヴィス。
・・・・・コンコン。
「ほら、早く行きなさいって!」
オリヴィエの言葉にも(いやー!)と頸を振るクラヴィス。ノックの主は痺れを
切らしたように声を掛けてきた。
「クラヴィス様、リュミエールでございます。」
そう言うとぎぎーっと音を立ててリュミエールが入ってきた。
「オリヴィエにオスカーもいらっしゃったのですか・・・・」
「そう、クラヴィスんところに涼みに来たのぉ☆」
「外は暑くてやってられないからな」
「ところでリュミちゃん、どう?クラヴィスの髪型。涼しげでしょ!」
オリヴィエはクラヴィスの座っている椅子の後ろに回り方に手を置くとグイッと
前に出した。リュミエールは静かにクラヴィスを見ると・・・・
「・・・・書類を持って参りました」
「「「(流された!Σ(゚∇゚|||)」」」
何もなかったかの様にリュミエールが書類をクラヴィスに渡す。
「至急の書類だそうで本日の夕刻までには仕上げてジュリアス様にお渡し下さい
ませ」
そう言ってリュミエールは去っていった。
・・・・・パタン。
「ちょっと、リュミちゃん酷くない?ボケは突っ込みで返さなきゃ!ボケた意味
が無いじゃないの。コメディアン失格よ!」
「おいっ、誰がコメディアンだ!しかもボケって何だ!ボケって!やっぱりお前
クラヴィス様の髪型を受け狙いにしたなっ!」
「いやぁ〜ん☆ばれたぁ〜?」
「びえーん」
「クラヴィス!だから泣くなって言ったでしょっ!」
おさげを握ってクラヴィスが泣き出した。涙びしょびしょの鼻水ずるずるだ。何
処に目や鼻があるのかわかりゃしない・・・・。オリヴィエは溜息を付くとクラヴィスの
机の中からタオルでも出てこないかと、クラヴィスの顔を拭くために純粋に探してい
ただが・・・・・。
「何これっ!?」
机の引き出しから出てきたのは、例のジュリアスに貰ったハンカチだったのだ。
「何でこんな白いハンカチばかり何十枚も置いてあるのよ!」
オリヴィエの声に気が付いたクラヴィスはオリヴィエの視界からハンカチを隠そう
とするがクラヴィスのその必死な態度に「何かがある」と勘ぐったオリヴィエは隠す
瞬間数枚のハンカチを取った。
「(あぁ〜・・・・)」
クラヴィスは必死にオリヴィエの持つハンカチを取り返そうとするがオリヴィエは
「はいよっ!オスカー」
とクラヴィスが手が届く寸前でオスカーにハンカチを投げた。受け止めたオスカー
は
「オリヴィエ、このハンカチ何だが日にちや時間が書いてあるぜ・・・・」
「どれどれ・・・・」
後ろから付いてくるクラヴィスの顔を掌でムギュウっと押さえて阻止して。2人
は話を進める。
「なんだろねぇ〜、このハンカチ」
「おい、オリヴィエ。ここの隅っこの金刺繍見ていろよ【J】って書いてあるぞ」
「どれどれ・・・・」
確かに見てみればハンカチの隅の方に金刺繍の【J】がしてある。他のハンカチ
を見ても皆同じように刺繍がしてある。
「「もしかしてっ」」
掌で押さえているはずのクラヴィスを見るとオリヴィエの掌から逃れて自分の長
衣の裾を持ってもじもじしているクラヴィスが居た。
「カパッ(掻っ払った)の?」
「(ううん)」
とクラヴィスが頸を振る。
「じゃぁ、パクッたの?」
・・・・ゴインッ
「アイタッ、何するのさ!オスカー」
「カパるのとパクるのは一緒だろうが・・・・クラヴィス様、ジュリアス様に頂いた
のですか?」
「(こくんっ)」
「へぇ〜」
とオリヴィエは暫くハンカチを見つめて考え込む。
「良いこと考えたぁ〜☆クラヴィスこのハンカチ貰って行くよぉーん☆」
そう言うと扉に向かうそれを見て慌てるクラヴィスはオリヴィエに走り寄る。もう
少しでと言うところでヒラリとかわされる・・・・なおも走り寄るクラヴィスをマタドー
ルの様にヒラリ・ハラリとかわすオリヴィエ・・・・
「ほぉ〜ら、こっちだよぉ〜ん」
「(あぁーっ)」
本当に今度こそは、今度こそはと言う時視界いっぱいにジュリアスのハンカチが
飛び込んできたかと思うと次の瞬間バインッ!と壁に激突した。ズルズルと崩れ落
ちるクラヴィスを尻目にオリヴィエは「ばぁっはっはーい☆」と言って去って行って
しまった・・・・。残されたオスカーは気まずげに冷たいタオルを取りにそーっと部屋を
出た。残されたクラヴィスは・・・・
「(ジュリアスのハンカチNO,18,61,81,95返してぇぇぇぇ〜)」
と思いっきり叫べず。強打した鼻から鼻血を流しながら心の中で叫ぶのでした。
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