Baby's Breath
「ジュリアス様、お忘れ物は?ほらハンカチをお忘れになっています よ。」 光の館の執事ヒースが館を出る前の何時もの忘れ物チェックをして いる。 「あっ!忘れてた。ヒースッ!バスケット取って」 「はいはいっ。分かりました、はいジュリアス様。バスケットとハン カチ。もう、忘れ物はありませんか・・・。」 「うん。もうない。」 「それでは、早くお出かけ下さい。クラヴィス様と待ち合わせをなさ っているのでしょう?」 「あぁっ!?そうだった。ヒース、今何時?」 ヒースの身の丈の半分も無い幼いジュリアスはヒースの腕時計をグ イッと引き寄せた。 「あぁっ!!あと5分しかない。ヒース、行って来るっ」 ジュリアスはそう言うと扉の方に駆けだした。 「ジュリアス様。お怪我などなさらないように、暗くなる前にお帰り になって下さいよ!」 「うんっ。わかった!」 バタンッと勢い良く扉を閉める音と共にジュリアスはクラヴィスと の待ち合わせの場に出て行った。 「元気が御宜しいですね。ジュリアス様は・・・」 ヒースの近くに居たメイドが言った。 「えぇ、そうですね。でもあのくらいが宜しいのですよ。ジュリアス 様はあのお年で守護聖と言う重責を担ってらっしゃるのですから少 し大人びた・・・そうですね。大人の振りをなさることが多いいでしょ う。子供らしい遊びをなさりませんからね・・・。」 「そうですね。何時もお外で遊ぶということはなさりませんものね」 「私は、心配していたのです。子供のころにしか味わえない楽しみを 知らずしてジュリアス様は大人になってしまうのかと・・・。でも、 クラヴィス様が来られてからジュリアス様は変わりました。今日の ように楽しそうにクラヴィス様と遊ばれることが多くなって・・・。本 当に良かった。」 「・・・そうですね。私も嬉しいですジュリアス様のあの様なお元気なお 姿が見れて・・・。」 「私もですよ・・・・。」 麗らかな日差しの中、若き当主を見送っていた執事とメイドは微笑ま しく当主が去った扉を優しく見つめていた・・・。 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ 「はぁっはぁっ。早くしないとクラヴィスが待っている」 パタパタと待ち合わせの場所にジュリアスは走る。手にはランチの入っ たバスケットを持って肩に掛かる金糸を麗らかな日差しに弾ませながら 約束の場所に急いでいた。 (あそこの門を曲がれば直ぐに・・・) 門を曲がると直ぐ広場のベンチが見えるはず・・・。そこでクラヴィスと待 ち合わせている。門を曲がるとやっぱりクラヴィスはもう来ていて、少し 寂しそうに俯いてベンチに座っていた。 「クラヴィースッ!」 バスケットを持っていない方の手で力一杯手を振ると、声に気が付いた クラヴィスがこちらを見てジュリアスだと確認するとパッと表情を輝かせ て手を振り返した。 「はぁはぁ・・・ごめんね。クラヴィス遅れちゃって・・・。」 「・・・ううん。そんなに待ってないから」 「ホントにごめんね・・・。」 「いいってば。気にしないでよジュリアス。」 (別に怒っていないのにジュリアスは何時までも謝ってくる。良いよ。 気にしないで、ジュリアスが一生懸命走って来たの分かってるから・・・) 「ジュリアス、それよりも早く湖に行こうよ」 「うっ、ぅん」 クラヴィスはジュリアスの手を引いて歩き出した。何だか楽しそうに喋 り歩いている二人を広場を行きかう人々はそんな宇宙を預かる天使の休息 を微笑ましく見ていた・・・。 ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ぱしゃっ、ぱしゃっ、と水の跳ねる音がする。 「クラヴィスッ!そっちに行ったぞ!」 「えっ!?あぁっ!逃げちゃった・・・」 湖に着くなり二人は、湖に入り魚を追いかけて遊んでいる。半ズボン のジュリアスとは違いクラヴィスは長衣の裾を膜って魚を追いかけてい た・・・。水飛沫がキラキラと日差しに反射して輝いていた。 「ジュリアス!今度はそっちに逃げたぞ」 「えぇ!?うわっ」 動きと思いはまた別のもので、気持ちは思いに付いていくけれど、思 いに動きが付いていかなかった・・・・バシャンと言う音と共にジュリアス は湖の中に尻餅を付いてしまった・・・。 「う゛ぅ゛・・・。つめたい・・・」 「大丈夫?ジュリアス!」 クラヴィスが驚いて走り寄ってくる。 「ふぇ・・・気持ち悪い」 「ほら、ジュリアス。早く立って服乾かそうよ」 「・・・・・うん」 今にも泣き出しそうなジュリアスの手を引いて立たせて湖から上がる とズボンを脱ぐように言って腰にケープを巻き付けてやる。 「ほら、ジュリアス。この枝にズボンを掛けておけば直ぐに乾いちゃう から心配しなくても大丈夫だから・・・もう、泣きそうな顔しないでよ・・ ・」 「・・・・うん。ありがとう、クラヴィス。ズボンを乾かしているうちにラ ンチを食べる?」 まだ、瞳に涙を浮かべているが先程よりも幾らか元気を出してくれた ようだった。 「うんっ。そうしようよ!ジュリアスの館のご飯美味しいから、早く食 べたい」 ジュリアスは持ってきたバスケットをおずおずと手繰り寄せてかぱっ とバスケットを開くと美味しそうな匂いが漂ってくる・・・。 「きゅるるるぅぅ〜・・・」 「ぷっ。クラヴィス・・・ふふ・・・あははは・・・」 あれだけ遊んだのだから、お腹が減るのも当たり前なのに何時もより 大きなお腹の音が出てしまって、それをジュリアスに笑われてクラヴィ スは拗ねたふりをする。 (・・・良かった。ジュリアスが笑ってくれた。) 「そんなに笑わなくても良いのに・・・」 「あはっ、あはは・・・ごっごめんクラヴィス。はいっ、どうぞ」 バスケットの中のサンドウィッチをクラヴィスにあげると小さな声で (・・・ありがとう)って言った。 「美味しい?」 「うん」 コックリと頷くクラヴィスを見てジュリアスは満足そうに微笑むと自分 もサンドウィッチを頬張った。 青々と茂る木々の梢梢とした音と鳥たちの囀り・・・。日差しはぽかぽか暖 かくて、何だか二人はとっても嬉しい気持ちになった。 「ジュリアスまた来ようね!」 「・・・うん」 なんだかあんまり元気のない返事をした。どうしたのかな、もう来たくな いのかな・・・。 「どうしたの?ジュリアス、もう来たくないの?」 「・・・・ううん。ちがう・・・・」 ジュリアスは小さく頭を振った。 「じゃぁ、どうして元気がないの?」 「んー。もうあんまり遊べないかも知れない。」 「なんで!?何で遊べないの!」 「他の守護聖様がお勉強頑張りなさいって言ったから・・・ボクは守護聖のおさ なるから頑張ってお勉強しないといけないんですよって言われたから・・・。」 幼いジュリアスに期待して、期待して、他の大人の守護聖は早く勉強をして 大人になりなさいとジュリアスに言うんだ。まだ、ジュリアスは7才なのに・・・ どうして、遊んじゃいけないの?みんなだって小さい頃は遊んだのに・・・どうし て?どうしてジュリアスだけ遊んじゃいけないって言うの?そんなことを言わ れて何にも不思議に思っていないジュリアスをみてボクは悲しくなった。でも、 ジュリアスに言ってもジュリアスは大人の言うことは絶対だと思っているから ボクが言ってももう、何も分かってくれない・・・。 「じゃあ、ジュリアス。日の曜日は勉強しなくても良いでしょ?その時遊ぼう よ!」 ボクは必死にジュリアスと遊べるように考えた。 「ん〜。日の曜日?どうしようかなぁ・・・お勉強の復習とか予習とかしなきゃ ならないし・・・・」 それじゃ、ジュリアスと一緒にいられる時がなくなっちゃう・・・。 「じゃあ、ボクも一緒にお勉強する!そんで、何時もお勉強してたらジュリア スが疲れちゃうから、疲れたときに一緒に遊ぶ!それで良い?」 「・・うん。それなら、大丈夫。でも良いのそれじゃあクラヴィスのお休みがな くなっちゃうよ?」 「いいの!ジュリアスと一緒にいられるなら良いの!だから、ジュリアスずっ と日の曜日は一緒にいようね」 「うん、クラヴィス」 ジュリアスは笑顔でそう言ったけれどジュリアスのその笑顔が悲しくてクラ ヴィスはジュリアスを抱きしめた。ジュリアスは遊べなくなると言うことに何 も思っていなくて・・・。悲しかった。 「どうしたの?クラヴィス・・・」 突然抱きついてきたクラヴィスにジュリアスが驚いたように聞いてくる。 「・・・なんでもない」 「泣いているのクラヴィス・・・」 「・・・・・」 ぎゅっとジュリアスを抱きしめた。ジュリアスはなんで悲しいのか分からな いから・・・。ボクが変わりに泣いてあげるよ・・。ジュリアスが悲しいと思ったとき は何時も側にいるから・・・。BACK Baby's Breathはかすみ草のことです。別名ではジプソフィラ・群撫子と言って かすみ草は、でしゃばらず、奥ゆかしい透明感を漂わせています。そんな所から 花言葉は「清らかな心」となったそうです。 ここに出てくる執事の名前、「ヒース」は別に私がX JAPANのFANだからで はなくて(汗) ヒース-Heath-は花で、日本で言う蛇の目・紅エリカのことです。花言葉は博愛 ・孤独・裏切などがありますが、このお話の中では勿論「博愛」の意味として使っ ております。